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ネタバレ解説!『ダイ・ハード/ラスト・デイ』のここが気になった


素晴らしいシナリオで映画ファンを唸らせた『ダイ・ハード』(1作目)ですが、シリーズ2作目以降はライターの火でジャンボジェット機を爆破したり、橋の上から15メートル下の船へダイブしたり、飛行中の戦闘機に生身で飛び乗るなど、マンガみたいなアクションシーンを連発した結果、どんどんリアリティが失われていきました。もう「毎回突っ込みどころ満載」と言っても過言じゃない有様です。

そんな『ダイ・ハード』の最新作(5作目)は、やっぱり全編突っ込みどころだらけでしたよ、トホホ。まあ、今更「なぜジョン・マクレーンは高い所から落ちても死なないのか?」みたいな部分を掘り下げても仕方が無いので、ストーリー的に気になった点などを中心に、いろいろネタバレしながら書いてみたいと思います。まだ映画を観てない人はご注意を。


●CIAの作戦とはどんな内容だったのか?
冒頭、武装集団が仕掛けた爆弾で裁判所が爆破され、その隙にジャックはコモロフと共に脱出するが、そもそもCIAはどうやってコモロフを連れ出すつもりだったのだろうか?まさか武装集団の誘拐計画に便乗するとは思えないから、爆弾騒ぎは単なる偶然だろう。

しかし、その後ジャックが車に乗って本部と通信する際に「予定より6分遅れているから計画変更だ」などと会話していることから、少なくとも車に乗って移動するまでは”計画通り”だったと考えられる。ではいったい、CIAが3年も掛けた極秘ミッションってどんな内容だったのだろう?


●正義の自動車泥棒
ジョン・マクレーンは警察官だ。市民の安全と平和を守るのが仕事である。だが、時々犯人逮捕を優先するあまり正義感が暴走しすぎて、善良な一般市民の車を強引に奪い取ってしまう悪いクセがあるようだ。しかも、どうやら彼の中では「車を奪う」という行為が半ば正当化されているらしく、シリーズを重ねる毎に被害がエスカレート。『ダイ・ハード3』ではなんと1日に3台の車を盗むという快挙を成し遂げ、もはや手がつけられない状態に。

そして本作ではとうとう、息子と二人で計4台の車を強奪している(親子で泥棒w)。中でも酷いのがベンツの盗み方だ。敵の装甲車を追跡するために突然車道へ飛び出したジョン・マクレーン。慌てて急ブレーキを踏んだ現地のロシア人が怒鳴りながら近寄ってくると、「俺はロシア語なんてわからねえんだよ!」といきなり顔面へパンチ!ロシア人が倒れた隙に堂々と車を盗んで走り去る、その姿には1ミリのためらいも感じられない。まさに外道www


●CIA、仕事しろ!
仲間のエージェントが殺され、重要人物もさらわれたのにCIAはなぜ何の援護もしないのか?スパイ衛星や無人偵察機で状況を把握しているはずなのに不自然だろ。ジャックも「どうすればいいのか分からない」と落ち込んでいる暇があったら、さっさと本部へ連絡しろよ!


●敵のキャラクターが弱い
これまで様々な強敵と戦ってきたマクレーン刑事だが、いずれの敵も知的で戦略性に優れ、「こいつら手強い!」と思わせるような存在だった。敵キャラが強ければ強いほど主人公の行動が引き立ち、最後に逆転して勝利を収める快感も増幅される。そういう意味では、過去の『ダイ・ハード』シリーズはエンターテイメントとして正しく機能していたと言えるだろう。

だが、本作の敵はキャラクターが弱い。おそらく歴代最弱だ。『1』のハンス・グルーバー、『2』のスチュアート大佐、『3』のサイモン、『4.0』のガブリエルなど、今までの敵を振り返ってみると、「明確な目的意識を持ち、事前に綿密な計画を企て、大勢の部下を指揮して着実に作戦を実行する」という極めて理知的な犯罪者で、何よりも敵ながら魅力を感じさせるキャラクターばかりだった。

それに対して本作は、一見ロシア政府のチャガリンが事件の主犯格かと思いきや、コマロフに裏をかかれて最終的には殺されてしまう。チャガリンの手下アリクも同様にコマロフの策略に引っ掛かり死亡。となると、真のラスボスはコマロフになるわけだが、彼の目的は金のために濃縮ウランを横流しすることで、今までの敵に比べると明らかにスケールがショボい。そもそもこの人、映画の終盤まで主人公達と一緒に逃げ回っているだけなので「凶悪犯」という印象が薄いのだ。

アクション映画のセオリーで考えれば、ジョンとジャックを痛め付けたアリクこそが本来主人公に殺されるべき役割のハズなのに、この展開では「やられたらやり返す!」的なカタルシスも得られない。アリクはそこそこキャラも立っていたので、もっと活躍させた方が良かったのでは?

結局最後は、コマロフと(あまり出番がなかった)娘のイリーナを適当にやっつけて映画は終了してしまう。これじゃ不完全燃焼な気分になって当然だろう。本気で面白いアクション映画にするなら、まず物凄く強い敵を設定して、主人公が大苦戦している様子をしっかり描き、でも最後は逆転してやっつけるという、それぐらいシンプルな話でいいんだよ!


ジェイ・コートニーサム・ワーシントンが似ている件
ジャック・マクレーンを演じたジェイ・コートニーが、サム・ワーシントンに見えて仕方がないんだけど気のせいだろうか?つーかもう、サム・ワーシントンで良かったんじゃね?
ジェイ・コートニー

サム・ワーシントン


●女性キャラをもっと見せろ!
ダイ・ハード』シリーズは基本的に”中年刑事の活躍”を描いた物語なので、映画全般に渡り”おっさん指数”が高い。しかし、『ダイ・ハード3』からは敵側に女性キャラを配置したおかげで、女子の比率がアップ。悪女が繰り出す華麗なアクションを堪能できるようになった。

そして本作でもコマロフの娘イリーナが、「大型バイクを運転して革のライダースーツをセクシーに脱ぐ」という峰不二子みたいな出で立ちで登場し、悪女の魅力を振り撒いている。「これはエロい!」と大いに期待したものの、残念ながら意外と活躍シーンが少なくてガッカリ。どうせならもっとセクシーに、もっと激しく主人公と戦う場面を見せてくれればいいのに。


そんな装備で大丈夫か?
マクレーン親子は「ちょっとコンビニ行ってくるわ」ぐらいの軽装で原発事故跡地をウロウロしているが、防護服とか着ないで大丈夫なのだろうか?そもそも放射能を気にしている様子すら無いんだけど、もしかして二人ともバカだから放射能の危険性を知らないんじゃないの?


●謎のガス
放射能が充満した施設内で「プシュー」と噴射するだけで、たちまち放射性物質が消えてしまう便利な気体。「放射能を中和するガス」とはいったい何なのか?そんなものが本当に存在するのか?だったら大至急日本にも送ってくれ!


●監督交代
以下、『ダイ・ハード/ラスト・デイ』の制作状況について。大作映画の監督がなかなか決まらないのは良くある話だが、本作も最終決定まで二転三転していたらしい。当初は、イスラエル出身の新人監督ノーム・ムロに内定していたものの事情により降板。

その後、『ワイルド・スピード MAX』のジャスティン・リン、『プッシャー』のニコラス・ウィンディング・レフンらの名が挙がるが、いずれも見送りに。結局、『エネミー・ライン』や『マックス・ペイン』のジョン・ムーアが抜擢されたんだけど、この人選は正直腑に落ちない。

エネミー・ライン』も『マックス・ペイン』も、派手なドンパチが印象的なだけで、映画の出来が格別に良いとは思えないし、大ヒットもしていない。なのになぜジョン・ムーアなのか?まあ、確かにレニー・ハーリンも『ダイ・ハード2』を撮った時は『エルム街の悪夢4』しか実績が無くて「どこの馬の骨だ?」とか言われてたけどさあ。それにしても納得できんぞ!


お金がない!
そもそもどうしてこんな映画になってしまったのか?についていは様々な理由が考えられるが、一つは「予算規模の縮小」だろう。大ヒット映画の続編といえば、普通は毎回製作費が高騰していくものだ。

しかし、前作『ダイ・ハード4.0』が1億1000万ドルというビッグバジェットであったのに対し、本作は9200万ドルに減少している。そのため、ロシアが舞台なのにロシアで撮影することができず、コストの安いブダペストでロケを行うハメになってしまったらしい、トホホ。みんなビンボーが悪いんや!


●スケジュールがギリギリ
予算が少ないということは、同時にスケジュールの逼迫を意味している。なぜなら、キャストやスタッフの拘束時間が1日延びれば、それだけで数十万ドルの費用が吹っ飛んでいくからだ。このため、撮影には時間的な余裕がほとんど無く、極めてタイトなスケジュール管理を余儀なくされたらしい。

ところが、そんな状況の中で大事件が勃発!なんとブダペストに建築した木造5階建ての巨大セットが、撮影前日に火事で全焼してしまったのである。当然、セットを作り直す時間も予算も残されていない。やむを得ず、土壇場でシナリオを大幅に書き直すという非常事態に大慌て。撮影できないシーンをカットしまくった結果、上映時間はシリーズ最短の98分になるなど様々な弊害が発生した。

そして、その影響はポストプロダクションを直撃。撮影後のフィルムに音響調整や特殊効果を加え、一つの作品として完成させるポストプロダクションの作業は、当然それなりに時間が掛かる。

しかし、今回はただでさえ厳しいスケジュールに予期せぬアクシデントが加わったため圧倒的に時間が足りず、CGを担当する部門は一部を不完全な仕上がりのまま公開するハメに。また、本来なら数ヵ月は必要な編集作業もわずか数週間でこなさなければならなず、エディターは不眠不休の突貫作業を強いられたとのこと。

結局、作業は2月14日の公開日ギリギリまで続けられ、1月末を過ぎてもまだ完成していなかったそうだ。このため、事前試写会すらまともに出来ず、決定していたブルース・ウィリスの来日キャンペーンも急遽キャンセルに。う〜ん、これだけドタバタが続けば、映画の出来に影響が出ても仕方がないかもしれないなあ。


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