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映画『ダイ・ハード』を10倍楽しく観るための制作裏話


■あらすじ『最新作公開間近の大人気シリーズ「ダイ・ハード」の原点となる第1作が登場!その日、ロサンゼルスの高層ビルで慰労パーティーが開かれていた。そこに突如テロリスト集団が乱入!その場に居合わせたマクレーン刑事は、人質にとられた妻たちを助けるため、たった一人でテロリスト集団に立ち向かう!絶対に死なない男・マクレーンを演じるのはブルース・ウィリス。その無敵の筋肉で、数々の危険なアクションに挑戦している。大爆発、大炎上…次々に迫り来るスリルに思わず息をのむ、大迫力のアクション・エンタティメント超大作!』

本日、水曜プレミアシネマにて『ダイ・ハード』が放映されます。もはや説明不要の超有名作品ですが、今月14日にシリーズ最新作の『ダイ・ハード/ラスト・デイ』がいよいよ公開されるタイミングに合わせ、初期のシリーズをもう一度復習しとけ!ってことなんでしょう(^.^)

というわけで本日は、知っていればもっと『ダイ・ハード』を楽しめる(かもしれない)裏話的なエピソードをご紹介しますよ。


●新世代のアクション・スター
主人公のキャスティングは当初、アーノルド・シュワルツェネッガーシルヴェスター・スタローンバート・レイノルズリチャード・ギアなどが候補として挙げられ、中でもリチャード・ギアが最有力とされていた。しかし、シュワルツェネッガーやスタローンなどの”スーパー・アクション・スター”が飽きられ始めていた時期だったため、人間くさく、リアルで、観客が主人公と一体化できるような”新しいヒーロー像”を求めていたプロデューサーの目には、ブルース・ウィリスが新鮮に映ったらしい。

こうして、見事「新世代アクション・スターの座」を射止めたブルースは、本作で文字通りの”体当たり演技”を見せ、スタントマンを使う予定だった危険なシーンも「俺にやらせろ!」とほとんど自分で演じ切り、現場のスタッフを驚嘆させた。中でも一番危険だったのは映画のクライマックスシーン。ナカトミ・ビルの屋上に上ったジョン・マクレーンが、消化ホースを体に巻き付けて決死のダイブを計る名場面である。

このシーンは、ビルに見立てたFOXスタジオの駐車場の屋上からブルース・ウィリス本人が飛び降りるという、非常に危険かつ困難なスタントだったらしい。もちろん、下にはエアバッグが敷いてあるものの、飛び降りた瞬間にすぐ後ろで大爆発が起こり、巨大な炎が上がる派手なスタントだったためスタッフはハラハラ。ブルースは背中にパッドを装着し、体中に耐火用の特殊ジェルを塗って完全防備。なぜか特殊効果コーディネーター(アル・ディサロ)の名前を叫びつつ、「ディサロのバカヤロー!」と絶叫しながら飛び降りた。無事、成功した直後には拍手が起こったそうだ。


●撮影は20世紀フォックスのビルを使用
映画の舞台になったナカトミ・ビルは、ロサンゼルスのフォックス・プラザ・ビルが使用された。プロダクション・デザイナーのジャクソン・デゴビア曰く、「色んなビルを探したが、こんなに爆発シーンが多い映画を受け入れてくれる場所はなかった。それでフォックス社のビルを使うことになったんだ」とのこと。

アクション・シーンはフォックス・プラザ・ビルの33階で撮影することに決定。下の階が弁護士事務所だったため、「上で物凄い爆発や銃撃音が響きますけど、映画の撮影なので気にしないでください」と事前に通達することに。しかし想像以上に凄まじいアクションが繰り広げられた結果、とうとう弁護士から苦情が来たらしい(そりゃそうだw)。

また、撮影中にビルの手摺を壊してしまい、補償問題で数ヶ月も20世紀フォックスと揉めるハメになったそうだ。ジョン・マクティアナン監督曰く、「”素材は純金製だぞ!”と言われ、法外な修理代を請求されたよ」とヤクザのような対応に撮影後も不満を訴えていたらしい。


●セットにはプロデューサーのこだわりが
撮影はこのビルの中やその周辺でも撮影されたが、ナカトミ社のメイン・フロアは20世紀フォックスの広大なスタジオの中にセットが組まれ、入り組んだオフィスの迷路や巨大な中央ロビーが作られた。窓の外に見える景色も、本物のロサンゼルスそっくりのパノラマ風景が再現され、長さ100メートルにも及ぶ円形のセットが一点の狂いもなくロスの地形を映し出している。

また、プロデューサーのジョエル・シルバーは、東京の帝国ホテルを設計したことで有名な建築家:フランク・ロイド・ライトの大ファンで、どうしてもナカトミ社のセットにライトのデザインを持ち込みたかった。そこで、ライトが40年代にデザインしたサンフランシスコ・ブリッジの巨大な模型をわざわざアリゾナ州の博物館から借りてきて、重役室の展示物として設置したのである。


●ロサンゼルスを封鎖せよ!
撮影中に起こるあらゆる爆発の仕掛けを担当したのは、『プレデター』でもジョン・マクティアナンと一緒に仕事をした特殊効果のエキスパート:アル・ディサロ。そのハイライトは、フォックス・ビルの階段で装甲車を爆破する作業だった。

しかし、いくらこのビルが撮影に最適だったとはいえ、ビルはセンチュリー・シティのど真ん中にあったし、あまりにも爆発の規模が大き過ぎたため、ロケーション・マネージャーも難色を示していた。特に、何台ものヘリコプターが地上15メートルの低空を時速120キロで突っ切り、フォックス・プラザの前で急上昇するとなると尚更難しい。色々検討した結果、日曜日に12台のカメラを設置し、ロサンゼルス警察がサンタモニカ・ブルーバードとピコ・ブルーバードの間を完全封鎖して行われることになった。


●なぜジョンはハンマーを起こしたのか?
ジョン・マクレーンが空調ダクトの中で、真下にいるテロリストのカール(アレクサンダー・ゴドノフ)を銃で狙うシーン。ここでジョンが使用しているベレッタM92Fはダブル・アクション(DA)という機構を採用しているので、本来ならハンマー(撃鉄)を起こす必要はない。シングル・アクション(SA)の銃の場合は、ハンマーを起こした状態からトリガー(引き金)を引いて撃つ仕様であるのに対し、DAはハンマーが倒れた状態からトリガーを引く事でハンマーが起き、そのままトリガーを引き切って弾丸を発射する仕様となっている。

なので、ジョンもトリガーを引くだけでいいはずなのに、わざわざ”カチッ”とハンマーを起こしているのだ。いったいなぜか?ハンマーが倒れた状態からそのまま撃つ場合、トリガーのストロークが長くなり、トリガープルも重くなる。そうなると、銃身がブレて的に命中しない可能性があるからだ。しかし、ハンマーを起こした状態なら、トリガーを少し絞るだけで済むため、銃身がブレることもなく、より正確な射撃ができる。

つまり、ここでジョンがハンマーを起こしたのは、「ダクトの中で身動きがとれず、絶体絶命の状態」に追い詰められた主人公が、一発必中で敵を倒すという”覚悟”を決めた瞬間を表現するためなのだ。更に、この後カールが行ってしまうと「やれやれ」という感じでハンマーを元の位置に戻す。同時に、観客の緊張も和らぐ。すなわち、観る者の”緊張と緩和”をコントロールする意味も含まれているのである。


●割れたガラスが復活する謎
テロリスト達は、ナカトミ・ビルに突入しようとしたロス市警の装甲車を、多目的ロケット・ランチャー(SMAW)を使って攻撃する。この時、発射されたロケット弾はビルの窓ガラスを突き破って装甲車に命中している。ところが、ハンス(アラン・リックマン)が「もう一発だ!」と命じると、さっき粉々に割れたはずのガラスが再び元に戻り、同じように割れてしまうのだ。しかも、割れ方まで全く同じ!

実はこのシーン、B級映画でよく使われる「アングル・トリック」という技法で撮影しているのだ。ロケット・ランチャーの発射シーンを撮る際、別々のアングルにカメラを設置して同時に撮影した後、編集で2回発射したように見せているのである。引きのカットは1発目、寄りのカットは2発目という具合に変化を付ければ、特殊効果の費用も倹約できるし撮影の手間も省けるし、一石二鳥というわけだ。当然、ロケット弾が命中して2度爆発した(ように見える)装甲車もこの方法で撮影されている。



●特撮は大御所リチャード・エドランド
本作で視覚効果を担当したのは、『スター・ウォーズ』でアカデミー賞も受賞した大ベテラン、リチャード・エドランド。ヘリコプターが飛ぶシーンでは7分の1の精巧なミニチュアが作られた。更にクライマックスの大爆発シーンのために、ナカトミ・ビルのミニチュアも制作。迫力満点の爆破シーンを実現している。しかし、本番前の爆破テストをフォックス・スタジオの駐車場で昼夜を問わずドッカンドッカン繰り返していたら、向かいのアパートの住人が「いいかげんにしろ!」と怒鳴り込んで来たらしい。


●まんまと騙されたアラン・リックマン
ビルから落ちるシーンを撮影するため、アラン・リックマンは約20メートルの高さからフォークリフトで吊るされた。背景は合成で、地面にはエアバッグが敷いてあるとはいえ相当怖い。ところが、スタント・コーディネーターのチャールズ・ピサーニは「3つ数えたら落とす」とアランに伝えていたのに、本番では「1つ」のタイミングで落としてしまう。実は、本人に内緒でこっそり監督と打ち合わせていたらしい。このため、演技ではなく”本気で驚くアラン・リックマンの表情が撮れた監督は大満足。逆に、アラン・リックマンはしばらく人間不信に陥ったそうだ(笑)。


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