■あらすじ『戦争で負傷し下半身不随となり車いす生活を余儀なくされた元海兵隊員のジェイク。ある時、彼は“アバター・プロジェクト”にスカウトされる。それは、地球から遥か彼方の衛星パンドラで、莫大な利益をもたらす希少な鉱物を採掘するための事業だった。そのために、過酷なパンドラの環境で活動できるよう先住民ナヴィと人間のDNAを掛け合わせた肉体“アバター”を製造。ジェイクに課せられた任務とは、そのアバターに意識をリンクさせ、遠隔操縦によりパンドラで生活し、ナヴィ族との交流を図ること。アバターを介してついに身体の自由を得たジェイクは、さっそく神秘的なパンドラの森へと足を踏み入れ、やがてナヴィ族の美しい女性ネイティリと運命的な出会いを果たすのだが…。「ターミネーター」のジェームズ・キャメロン監督が、自らも長年にわたって開発に関わってきた3D技術をはじめ最先端の映像テクノロジーを存分に駆使し、「タイタニック」以来12年ぶりに世に放つSFアクション超大作!』
本日、日曜洋画劇場でジェームズ・キャメロンの『アバター』が放映されます。なんか、つい最近もTVでやってたような気がするんだけど、新作映画を短期間に何度も放送する意味が良く分かりませんな。
この映画、「3Dの立体表現が素晴らしい!」とか「誰も見たことが無いオリジナルの世界観が最高!」など、公開直後から絶賛の声が挙がっていて僕も劇場で観たんですが、個人的に最も気になったのは、ジェームズ・キャメロンにしてはシナリオが雑だな、という点。
たとえば、ある人物が主人公を助ける場面や、絶体絶命のピンチを脱する場面などで、今までのキャメロンの映画では有り得ないような”ご都合主義”が多数出てきて愕然とさせられたんですよね。
と言っても、決して観るに耐えないようなレベルではなくて、これがもし、マイケル・ベイの映画だったら全く気にならなかったと思います(いつものことなのでw)。でも、ジェームズ・キャメロンの映画でまさかこれほど安易な展開を見せられるとは予想していなかった所為か、かなりのショックを受けました。
まあ、本来ハリウッドの超大作映画は突っ込みどころが多いのが当たり前なんですけど、キャメロンは隙の無い脚本を書く数少ない監督だったため、「今回もきっと凄いストーリーに違いない!」と過剰に期待してしまったのかもしれません。
また、本作は内容的に既存の映画を連想させるシーンが多い点も気になりました。例えば基本設定は、白人がスー族の中に入り彼らの風習を学んでゆく『ダンス・ウィズ・ウルブズ』や、アメリカを開拓しに来た男がポカホンタスと恋に落ちる『ニュー・ワールド』にそっくりだったり、原始的な先住民と最新式の銃火器で武装した人類が戦う戦闘シーンは『スターウォーズ:エピソード1』に似ている、という具合に既視感ありまくりなのですよ。
中でも一番顕著なのが宮崎駿の影響で、もはや言い逃れができないレベルに達しています。人間と森や生物との共生、人体にまとわりつく無数の白い触手等、全体の世界観は「ナウシカ」。空中に浮かぶ山は「ラピュタ」。獣に乗って戦うお姫さまは「もののけ姫」など。
故意か無意識かはともかく、「完全オリジナル」を謳っておきながら全体のビジュアルイメージが宮崎アニメ・テイストなのはいかがなものかと。このように、本作は「いつかどこかで見たような」設定や物語がどうしても脳裏を過ってしまうのです。
更に描かれているストーリー自体も、エコロジー的な暮らしを保つナヴィたちに対し、人類は明らかに侵略者という図式で、先住民を迫害してきたアメリカの歴史そのもの。同時に、ベトナム戦争やイラク戦争のイメージも取り込まれており、そのメッセージはストレートでとても分かりやすいのですが、分かりやす過ぎて逆に反発を感じてしまう有様に。もうちょっと捻ってくれよと。
ついでに、パワーローダーの動きも軽すぎるんじゃないかと。あんなにでかくて重いロボットが機敏にガチャガチャと動き回る姿はどうしても違和感があるんだよねえ。『トランスフォーマー』じゃないんだから(苦笑)。
この映画を一言で言えば「物凄く普通の話」です。普通で何が悪いのかと言えばもちろん全然悪くはないんだけど、反対に良くもないわけで。主人公とヒロインが恋に落ちる過程や、それに伴う苦悩や葛藤、クライマックスの戦闘シーンに至るまで全てがセオリー通りの展開で、意外性もなければ新鮮味もない。もう、「物凄く普通」としか形容できないような内容なのですよ。
では、本作最大の見どころは何かと言えば、それは間違いなくビジュアルであり、モーションキャプチャーを更に強化したエモーションキャプチャーによるCGキャラクターは、画面の中で抜群の存在感を放っています。まさに”映像革命”の名に相応しい驚異的な完成度!実際、劇場の大スクリーンで観た3D映像は素晴らしい臨場感を醸しだしていました。すなわち、『アバター』という作品は、「物凄く普通の話」を「最高峰の映像技術」を駆使して映画化した非常に分かりやすいエンターテイメントなのです。
まあそれはいいんだけど、内容が”既存の寄せ集め”じゃあちょっと物足りない(ついでにジェームズ・ホーナーの音楽も、印象に残る旋律が特に無いような)。いや、もちろん映画は面白いよ?面白いんだけど…う〜ん。最高の映像と最高のストーリーを同時に望むのは贅沢なことなのかなあ。
ちなみに、いつも映画に強い女性を登場させているジェームズ・キャメロンは、今回もシガーニー・ウィーバーやゾーイ・サルダナなど、いかにも強そうな女優ばかりをキャスティングしており、12年経っても女の趣味がブレてないことが丸分かりです(笑)。
中でも、僕が個人的に大好きなミシェル・ロドリゲスが出ていたのが嬉しかった。筋肉質の体に白のタンクトップをラフに着こなし、いかついサングラスをかけて武装ヘリを軽々と操縦する姿は、他の誰よりも男前(笑)。もう少し登場シーンが多ければ更に良かったのになあ。
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