『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』　スタッフ・インタビュー

3連休の映画館は大変な賑わいを見せたようで、二週連続で『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』が首位を獲得。観客動員数は200万人、興行収益は25億円を突破し、順調に記録を伸ばし続けているようです。

そんな『踊る大捜査線』を製作した亀山千広プロデューサーのインタビュー記事が、月刊「Cut」9月号に載っていたので一部抜粋してみました。『踊る大捜査線』シリーズが日本の映画界に及ぼした影響とは何か？亀山プロデューサーがこれまでの映画製作における姿勢を振り返りつつ、ヒットの要因について語っています。

●『踊る大捜査線』という作品が、日本のエンターテイメント史、ドラマ史に残した最大の革命とは何だったのかと思いますか？

「それはねえ、『3』のときも『踊る大捜査線』は日本の映画の何を変えたかって色んな人が色んなことを言ってくれたんですけど、そういう文章を読めば読むほど、それほど受け入れられてもいないんだなっていうことがわかるというか。中には映画をダメにしたって言う人もいるわけでね（笑）」

「ただ、芸術性とか文化とかね、そういうことを言い出したらそりゃあ、その評価軸で論じられる作品でないことは僕らも百も承知だし。ただ、15年やってきてその都度、時代みたいなものを映してきたのかなあっていう気はします。で、これはヒットした作品だからいうことではなくて、『踊る』は常に観てくれる人を意識しながら作ってきたんです」

「つまり、観る人の気持ちによって、ストーリーまで大幅に変えるっていうことをしてきたわけですね。それをお客に迎合してるって言うのであれば、そのものズバリかもしれないし、商業主義っちゃそうなのかもしれないけど、本来映画の、エンターテイメントを与かる人間とすると、僕らの正義はそれなんですよ」

「映画監督は文化人であるが故にメッセージを映像に叩きつけて世の中に伝えるべきである、とか。そういう考え方に対しては何の異論もないですよ。ないけど、多くの人はそういうんじゃなくて、お金を払ったらその何時間かは映画の世界でハラハラドキドキする、大笑いする、泣く。で、面白かった、お腹すいたって言いながらご飯がおいしくて、その時に”あのシーンかっこよかったねえ！”とか言いながら話題が拡がっていく。そういうことが、実は一番シンプルなエンターテンメントの基本だと思うので、そのことだけを考えてやってきたのは間違いない」

「そりゃあ当然、監督とかね、演者さんたちはその流行りの技術、今の風俗、そういうものを全部取り入れようとして動いてるんですけど、出来上がった作品はその集大成として、お客さんのことだけを考えて作ってきたものであって、それがダメだとか間違ってるとは言わせませんよっていう（笑）」

「事実、スタジオジブリの宮崎駿さんのように、その世界観の中で、宮崎さんの持っているものを叩きつけて何百万人もの人が感動する、それはもう、本当に素晴らしい稀有な例だと思うんですけどね。ただ、僕らにはそんな才能も能力も無いので、とにかくお客さんのことだけを意識して作ってきたつもりです」

「昔、僕が好きだったゴダールの映画なんかは”う〜ん、何度観てもわかんない”って、わからないことを議論し合うっていう（笑）。それとは違うのでね。うん、いいんですよ。面白かった、つまんなかった、泣いた、笑ったで。だけど、それを真剣に考えてやってくれるやつが現れったていう第一段階の映画が『踊る』だったんだろうなと。やっぱり感覚的にそこを理解して作ってくれるクリエイターたち、監督、脚本家、役者さんたちが存在してくれたお陰でね。その後の映画界、まあ推して知るべしっていうことだと思うんですよね。唯一、そこだけは胸を張れることだと思うんです」