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三池崇史監督作品『スキヤキウエスタン・ジャンゴ』感想

■あらすじ『壇ノ浦の戦いから数百年後。山あいの寒村“湯田(ユタ)”は平家の落人が拓いた村。ある時、そこに平家再興の埋蔵金が隠されていると噂が立ち、よそ者が押し寄せ村を荒らして回る。やがて村は、平清盛率いる平家ギャング(赤軍)と、源義経率いる源氏ギャング(白軍)が村人を巻き込み激しく対峙することに。そんな抗争渦巻く村に、一人の凄腕ガンマンが流れ着いた。両軍とも、この流れ者を用心棒に引き入れるべく動き出し、事態は風雲急を告げるのだった。鬼才・三池崇史監督がオールスターキャストで描く全編英語による異色の和製ウエスタン活劇!』



オープニング、書割りの富士山の前で、ガンマンのコスプレをして英語で喋りまくる香取慎吾を観た瞬間、「SMAP×SMAPのコントか!?」と思わず叫びそうになったのは僕だけではないだろう。なんせ、背景はショボいセットが丸出しで、しかも大道具の“太陽”を天井からぶら下げ、そのワイヤーが丸見えになっているのだ。

おまけに、そこでスキヤキを食べているのは、世界的な映画監督クエンティン・タランティーノ!いったいなんなんだ、この映画は!?それから後はもう、「三池崇史ワールド」が大炸裂!「時代劇プラス西部劇」というワケの分からん世界観に馴染めるかどうかが、本作を楽しめるかどうかの分岐点となるだろう。

だが特筆すべきは、バカバカしい設定とは裏腹に、意外と本気で取り組んでいるガンアクションの数々である。伊藤英明は、ロングコートの裾をなびかせ、スローモーションで回転しながら二丁拳銃をぶっ放し(『フェイス・オフ』?)、飛んで来たボウガンの矢を撃ち落す!

使用している銃は、ウエスタンの定番:コルト・シングルアクションアーミー・リヴォルバー、すなわちピースメイカーである。しかも、騎兵隊が正式採用したアーティラリー(フロンティア)モデルとシビリアン・モデルを使い分けるというこだわり様。

また、佐藤浩市扮する平清盛(ヘンリー)は、レミントン・ニューモデル・アーミー、後半は『ターミネーター2』のアーノルド・シュワルツェネガーみたいにガトリング・ガンを乱射する(このガトリング・ガンは映画のためだけに作られた架空のモデルらしい)。

そして、伊勢谷友介扮する源義経は、片手に銃(コルト・ネイビー・リヴォルバー)、片手に日本刀という変則二刀流で対抗。いやもう、この義経のガンさばきというか刀さばきがメチャクチャかっこいい!特に、銃を水平に回転させるバタフライ・スピンの上手いこと!

目にも止まらぬ早撃ちで敵を倒したと思ったら、飛んで来る弾丸を刀で斬り落としたり(『ルパン三世』の石川五右衛門か!?)、その活躍ぶりはもはや人間業では有り得ない。伊勢谷友介のキャリアの中で、一番おいしい役ではないだろうか。少なくとも『キャシャーン』の750倍ぐらいかっこ良かったぞ(笑)。

更に特筆すべきは、桃井かおり扮するルリ子のガンアクション。単なる茶店のバーサンかと思いきや、その正体は伝説の女ガンマン“血まみれの弁天”!しかも、銃の師匠はクエンティン・タランティーノ桃井かおりの作ったスキヤキを一口食べたタランティーノが、「こんな甘いスキヤキが喰えるか〜!」とちゃぶ台をひっくり返すシーンを観た瞬間、脳の思考が停止した。この師弟のやり取りは完全にコントである。

しかし、銃撃戦が始まるやいなや、凄まじい勢いで桃井かおりの銃(スミス&ウエッソン・モデル3・スコフィールド)が火を放つ!舞を舞うように体を回転させながら二丁拳銃をガンガン撃ちまくるその姿のなんたるカッコ良さ!いや〜、久しぶりに「見応えのある日本製ガンアクション映画を観た」って感じで満足度高し。

一方、ストーリーの方はどうかと言うと、設定や世界観はハチャメチャながらも、案外まともな人間ドラマを展開しているのだから驚きだ。本作で描かれているものは「両親を殺された子供の復讐劇」であり、「どんな苦境に立たされても力強く生きようとする人間の姿」である。

そして繰り広げられる“漢と漢(おとこ)の熱い戦い”。そう、この映画には間違い無くパトス(情熱)がある。これぞ娯楽映画!これぞエンターテイメント!まさに正真正銘の大傑作であると言えよう!バカ映画好きは必見だッ!ただし、真面目な映画ファンは激怒するかも(笑)

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