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『スーパーマン・リターンズ』ネタバレ制作秘話


巨匠ジョン・ウィリアムス作曲のテーマが爆音と共に鳴り響く中、キャストやスタッフの名前が眩しい光を放ちながら“バシュウウウッ!”と飛んでくる有名な78年版『スーパーマン』のオープニングタイトルを、なんとそのまんま現代に復活!冒頭からいきなり、オリジナル版に対するブライアン・シンガーの溢れんばかりのリスペクトが炸裂しており、30歳以上のオッサン・ファンは感涙せずにはいられない。

更に、両翼を失って猛スピードで落下するジェット機を追い越し、機首にしがみついてそれを受け止めてみせるスーパーマンのなんというカッコよさ!アメコミ映画の主人公が等身大の人間として描かれ、アイデンティティーに苦悩する描写ばかりが目立つ昨今において、巨大なジェット機素手でキャッチするスーパーマン馬鹿馬鹿しいほどヒーロー性を強調したビジュアルには、もはや脱帽するしかありません。天晴れ!

だが、『スーパーマン リターンズ』ほど映画完成まで難航を極めた作品も例が無いだろう。悪名高いキャノン・フィルムズのメナハム・ゴーランとヨーラム・グローバスが、クリストファー・リーブ主演の3本を製作したサルキンド親子から、『スーパーマン』の映画化権を取得したのが1987年。その後、ワーナー・ブラザースは『スーパーマン4最強の敵』の製作費としてゴーランとグローバスに4000万ドル(約48億円)を与えた。

しかし、二人は他の映画にその資金を注ぎ込んでしまい、『スーパーマン4』の製作にはわずか1700万ドルしか掛けられなかったのである。当然ながらストーリーはメチャクチャに改悪され、SFXも大幅に削減されて見るも無残な出来となり、興行成績は惨敗。

88年に「スーパーマン生誕50周年記念作品」として大々的に公開されたものの、そのあまりにも酷い内容にファンは激怒し、とうとうシリーズに引導を渡す結果となってしまったのだ。ここから、『スーパーマン』再映画化にまつわる、壮絶な紆余曲折の物語が始まったのである。

スーパーマン役の候補に挙がった面子は、ショーン・ペンニコラス・ケイジジョシュ・ハートネットポール・ウォーカーブレンダン・フレイザーアシュトン・カッチャーキアヌ・リーブスジム・カヴィーゼル、ウィル・スミスなど大物俳優がズラリ。そして監督候補は、まず最初にロバート・ロドリゲスが選ばれた。

しかし、ワーナーがティム・バートンを希望したため、あっさりクビに。バートンはレックス・ルーサー役にジョニー・デップを想定していたが、脚本完成の遅れなどにしびれを切らした挙句ついに降板。次にブレット・ラトナーが監督に選ばれるものの、ワーナーと意見が対立し、またまた降板。代わりにX-MEN ファイナル・ディシジョン』の製作に取り掛かる。

続いてマックGが監督候補に挙がり、ロイス・レイン役にスカーレット・ヨハンソンが選ばれた。しかし、『チャーリーズ・エンジェル』みたいなアクション・コメディを撮ろうとしたマックGにワーナーが難色を示す。

更に、「スーパーマン役には黒人俳優のウィル・スミスを起用したい」ととんでもない事を言い出すなど、あまりにも今までとはイメージが違い過ぎるマックG版『スーパーマン』に、スタジオは大混乱。おまけに、オーストラリアでのロケを「行きたくない!」と拒否したため、とうとう堪忍袋の緒が切れたワーナーによって降板させられてしまった。

その後、J.J.エイブラムスやウォルフガング・ペーターゼンなど、様々な監督候補が現れては消えていく事を繰り返し、”スーパーマン・プロジェクト”は完全に迷走。もはや、再映画化は不可能かと思われたその時、ようやくブライアン・シンガーが監督に決定したのである。

ふと気付けば、パート4公開から実に19年の月日が流れ、監督や俳優の降板、脚本の度重なるリライトなど、製作開始前の準備段階でなんと5000万ドル(約60億円)もの巨費が投じられていたのであった、トホホ。

そんな状況を反映してか、米バラエティ誌によると、ワーナー・ブラザースは『スーパーマン・リターンズ』の続編を製作すべきかどうか迷っているという。同作には2億ドル(約232億円)以上の製作費がかかっているばかりか、長年にわたる企画開発費や巨額の広告宣伝費が投じられているため、コストは総額3億5000万ドル(約406億円)に及ぶと言われている。

しかし、全米ボックスオフィスの成績は1億9300万ドル(約223億円)ほどで、海外と合わせても赤字をギリギリ回避できる程度にしかならない見込み。スーパーマン役のブランドン・ラウスをはじめとする全キャストは3本契約を交わしており、ブライアン・シンガー監督も09年に続編を発表したいと語っているが、ワーナー・ブラザースは厳しい現状にゴーサインを出しかねているようだ。

まあ、続編がどうなるかはさて置き、『スーパーマン リターンズ』は問答無用の娯楽大作に仕上がっている。但し、基本的に“ファン向け”に作られた映画という感は否めないので、ファン以外の人が観たら若干評価は下がるかもしれない(このテの映画にしては尺も長いし、ヒーロー物にありがちなツッコミどころも満載だ)。

中でも驚いたのは、あれだけ飛行機の中でシェイクされながらも全く無傷ロイス・レイン。スーパーマン並みの不死身ぶりである。なんて頑丈な体なんだ(笑)。

しかし、本作最大の衝撃は、スーパーウーマン・ロイスでも、そのスーパー息子でもなく、“スーパーマンの服”であろう。空から落下して病院に運ばれたスーパーマンに対し、懸命な処置を施す医者たち(この時点で既に十分オカシイのだがw)。

電気ショックを与えるため、いきなりスーツを「ビリッ!」と破く。えええ!?スーパーマンの服って、あんなに簡単に破れるの!?そんなんで、よく銃弾の衝撃や大気圏の摩擦熱に耐えられるなあ。てっきり、クリプトン星で作られた特殊な素材かと思っていたのに、もしかして単なる布ですか?う〜ん、スーパーマン恐るべし!



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