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ガン=カタ?『ウルトラヴァイオレット』ネタバレ映画感想

■あらすじ『21世紀末、全世界に新種のウィルスが蔓延し、感染した人間は超人的な知能と運動能力を身につけるが、“ファージ”と呼ばれた彼らは感染後わずか12年で命を落とす運命にあった。ファージの能力を恐れた人間たちは、彼らの根絶を企て、政府によるファージ掃討作戦が開始される。追い詰められたファージは地下組織を結成、人間政府との激しい抗争を繰り広げる事に。やがて、政府はファージ絶滅の切り札となる最終兵器の開発に成功する。ファージ側はその情報をつかむと、最終兵器強奪のため、最強の殺し屋ヴァイオレットを送り込んだ。かつて、感染した夫と子どもを政府に殺され復讐に燃えるヴァイオレットは、兵器の入ったケースを難なく奪い去る。しかしその直後、彼女は最終兵器がわずか9歳の少年であることを知るのだった・・・。驚異的な能力を持つ超人間“ファージ”とその撲滅を目指す政府が対立する近未来を舞台に、人間の少年を守るため、両勢力を敵に回した女戦士ヴァイオレットの孤独な戦いを、息をもつかせぬアクションの連続で描く!「リベリオン」のカート・ウィマー監督が、「バイオ・ハザード」のミラ・ジョヴォヴィッチを主演に迎えて贈るSFアクション超大作!』



過去に何度も「『リベリオン』はサイコーだッ!」と言い続けてきた僕だが、本作は『リベリオン』を製作したカート・ウィマー監督が、満を持して世に放つ劇場最新作。期待しないハズがない。でも、予告編から既に危険な香りがプンプンと…。どーなる!?

ある意味、予想通りと言うべきか、非常に残念な結果となってしまったようだ、トホホ。まず、圧倒的にヴィジュアルが安い。舞台となる近未来の背景は、そのほとんどが大量のCG合成で埋め尽くされているが、どれもこれも薄っぺらくて全く現実感が無いのだ。まさに、「ゲームを見ているみたい」という表現がぴったりで泣けてくる。

また、CG以外の実写背景はピンクや青のドギツい蛍光色が妙にビンボー臭く、場末のキャバレーを彷彿とさせる有様。『リベリオン』でも背景にCGを使っていたが、特に気にはならなかったという点を考えると、「映像効果的には明らかに後退している」と言わざるを得ない(まあ『リベリオン』の場合は、単にお金が無くてCGを多用出来なかった所為かもしれないがw)。だが、最大の問題点は、「ストーリーがちっとも面白くない」という事だろう。

リベリオン』があれほど面白かったのは、単に“ガン=カタがカッコ良かったから”だけではない。独裁政府の策略によって感情を奪われてしまった主人公が、友人や愛する人の死をきっかけに、再び人間性を取り戻すまでの感動的なドラマを、懇切丁寧に描き切っていたからなのだ。

ところが、『ウルトラヴァイオレット』のストーリー展開はあまりにもいいかげんで大雑把過ぎる。主人公と幼い子供を使って観客を感動させようという魂胆はミエミエだが、如何せん二人の関係性を示すエピソードが不十分でちっとも感動できない。もっとエピソードを増やすべきでは?“ファージ”の設定も十分に生かされているとは思えないぞ。

そしてもう一つの問題点は、アクションが多すぎる事。「アクション映画にアクションが多くて、何が問題なの?」と思われるかもしれないが、多ければいいというものではない。大事なのはアクションそのものではなく、「なぜ、そのアクションに至ったのか」という理由(動機)を描写する事なのだ。

その理由があるからこそ、観客は登場人物に感情移入する事ができるし、ハラハラドキドキできるのである。その過程をすっ飛ばしていきなり結果(アクション)だけを見せられても、「わ〜、スゲエなあ」と思うだけで、全然ハラハラドキドキできないと思うんだが。

現に『リベリオン』は、アクション映画と呼ぶには驚くほどアクションシーンが少なかった(全編通してわずか3〜4箇所程度)。なぜなら、上映時間の大半を登場人物の感情描写に充てているからだ。しかし少ないからこそ逆に、一つ一つのアクションが強く印象に残る結果になったとも言える。

主人公がひたすら耐え忍び、溜めて溜めて溜めて溜めて溜めて一気に爆発するクライマックスの大殺戮シーンたるや、「これぞ男のアクションだ!」と言わんばかりのとてつもないカタルシスに満ち溢れていた。

それに対して『ウルトラヴァイオレット』は、アクションシーンがちょっと多過ぎるし、おまけに一つ一つのアクションが長い。「本当に必要なのか?」と首を傾げたくなるような無駄アクションも満載だ。しかも、肝心のガン=カタもあまりカッコよくないぞ。そもそも、ガン=カタ自体が本当にカッコいいのかどうか、判断が非常に微妙なのだから尚更厄介だ(笑)。

リベリオン』を観た人は分かると思うが、ガン=カタとはあくまでも“様式美”を追求した結果生まれたガンアクションであり、実用性は限り無くゼロに近い(あんなデタラメな撃ち方で、まともに当たるワケないってw)。

すなわち、カッコいい基準を“リアリティ”に置いた場合、単に“二挺拳銃を持ったおっさんが踊りを踊っている”ようにしか見えないのである(特にラストの対決シーンに至っては、「カッコいい」と「カッコ悪い」の境界線を、ギリギリのテンションで綱渡りしているとさえ言える。一歩間違えれば爆笑必至となる危険性を孕んでおり、何度観ても凄まじいとしか言いようが無い)。

要するに、ガン=カタは“あまり見せ過ぎると逆効果になる”という事だ。必要最小限度に止めておいて、「良く分からないけど、なんだか凄そう」と思わせる程度で丁度いい。しかも本作の上映時間はたったの87分しかないのだから、尚更アクションシーンは減らすべきだったと思う(つーか、これを撮るんだったら『リベリオン2』を作ってくれよ〜)。

ガンアクションで印象に残ったのは、“紫のマズルフラッシュ”ぐらいかなあ。しかも、お馴染みの“十字型”になってて思わずニヤリ(これも、『リベリオン』を観た人にしか分からないネタですなw)。

そんなワケで、個人的には「イーオン・フラックスよりはマシかな〜」という程度であった。ミラ・ジョヴォヴィッチのファンなら、『バイオ・ハザード2』の方がまだ面白い。ケイト・ベッキンセールのファンならアンダーワールドを観よう(いや、二挺拳銃繋がりでw)。


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