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オタクの視点で『ダイ・ハード』を観る

本日は僕の“映画の見方が変わる”きっかけになった一冊の本の事について書きたいと思う。タイトルはズバリ「オタク学入門」。女性が敬遠しそうな“オタク”という言葉と、“〜学入門”という難しそうな言葉、まさに“一般人の購入を拒むかのような”二つのキーワードをあえてくっつけた実に素晴らしいタイトルだ(笑)。

この本は“オタク”と呼ばれている人たちが普段どのような視点でモノを見て、どのような思考パターンでモノを考えているのかを、一般の人にも分かり易く論理的かつ客観的に解説した(おそらく)世界で始めての本である。この本を読めば“オタク”の生態や考え方がほぼ完璧に理解出来るというスグレモノなのだ(そんなもの知りたくないという人には全く不要な情報ではあるが)。

ではなぜこの本が映画を見る時の参考になるかというと、“オタクの視点”を説明する際の参考例として様々なハリウッド映画を具体的に“構造解析”しているからである。

言うまでもなく“映画”とは娯楽であり、楽しみ方は個人の自由だ。一般的に観客にとって大事な事は「面白かった」か「つまらなかった」であり、そこから先の思考の発展は必要ない。

しかし岡田氏の考え方は“なぜ”「面白かったか」あるいは「つまらなかったか」を徹底的に分析する事によって映画の構造が見えてくる、そうすれば映画を見るという行為が今まで以上に充実したものになるはずだ、と述べているのだ。

そして「ストップウォッチのシナリオ学」というテーマの中で、映画における“時間”の重要性についてじっくりと説明している。それは「ほぼ全てのハリウッド映画はあらゆるカットが論理的に計算され尽くされ、時間ごとの構成は数分のズレもなく一致している」というものだ。具体的には以下のようになっている。

1、まず最初の30分までは導入部で、主人公や周りの人間関係が紹介される。
2、そして30分目に、主人公をラストまで向かわせる行動の動機が与えられる。
3、60分目は映画の転回点で、新たな動きが起こる。
4、90分目にいよいよクライマックスへ至る事件が発生!ドラマのテンションが一気に加速する。
5、ラストシーン

これが全てのハリウッド映画における基本的構造である。つまりほぼ30分ごとに何らかのイベントが発生し、それによってストーリーが進行していくのだ。もちろん映画によって3〜4分の誤差はあるものの、「イベントの内容はどの映画もほぼ完全に一致している」との事。

僕は最初にこの解説を読んだ時「そんなバカな!」とすぐには信じられなかった。そこで手持ちの『ダイ・ハード』のLDを使って(当時はまだDVDがなかった)検証してみたのだ。

ご存知ブルース・ウィルス主演の大ヒットアクション映画であり、脚本が良く出来ている事でも有名な傑作だ。時間がある人は僕と同じように「何分目に何が起こっているか」を確認しながら見て頂きたい。

1、ジョン・マクレーンが奥さんの勤務先のビルを訪ねる(家庭環境の説明)
2、社長が強盗団に殺される。ジョンは彼を助けられなかった事を後悔する(31分35秒)
3、ジョン、強盗団のボスに無線で宣戦布告(59分11秒)
4、ジョンとボス、ついに初対面!凄絶なアクションへ突入する(90分3秒)
5、ジョンと奥さんキスして終了

以上、ものの見事に先に述べた基本構造通りの展開となっている事が良く分かる。この事実に感心した僕は、以来家で映画を観る時は必ず時間を確認しながら観ることにしている(さすがに劇場ではやらないが)。

では、いったいなぜこんな構造になっているかと言うと、映画の本質とは“観ている人を驚かせること”にあるからなのだ。30分ごとに配置されたイベントによって観客は驚き、その感情は激しく揺さぶられることになる。

すなわち“たくさんの人が感動する映画”というのは、実は作り手によって最初から意図的に感動させるように作られている映画なのだ。これを岡田氏は「映画とは感情のジェットコースターである」と定義づけている。つまり面白い映画とは観客の感情がジェットコースターのように常に激しく揺さぶられる映画の事なのだ。

この他にも「粋の眼」「匠の眼」「通の目」という3つの視点で『ブレードランナー』を見るという検証も行っており、これまた非常に面白い。今まで何度も見た映画であっても、新たな事実を発見できる事間違い無し。まさに全ての映画オタクには必読の書と言っても過言ではないだろう(ちょっと過言か?)。

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