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ピーター・ジャクソン監督作品『キング・コング』映画感想

■あらすじ『1933年ニューヨーク。野心家の映画監督カール・デナム(ジャック・ブラック)は、かつてない冒険映画を撮り、映画界をあっと言わせたいという野望を持っていた。ある日、「映画の撮影がある」と言って、脚本家のジャック(エイドリアン・ブロディ)と美しい新人女優アン(ナオミ・ワッツ)を誘い、撮影クルーとともに航海に乗り出す。そして船が到着したのは、幻の孤島:スカル・アイランドだった。樹木がうっそうと生い茂る密林で、主人公たちは島に生息するとてつもない生き物たちを目撃する!『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督が描き出す、空前絶後のアドベンチャー超大作!』


どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

連日、雑用に忙殺されている私ですが、ようやくわずかばかりの時間が取れたので、久しぶりに映画館へ行ってきましたよ。なんと今年初の劇場鑑賞です、トホホ。

というワケで本作は、ピーター・激ヤセ・ジャクソン監督が「子供の頃に観て以来の大ファン」だと公言して憚らない『キング・コング』を、念願叶って自らの手でリメイクしたVFX超大作である。さすが「ずっと撮りたかった映画だ」と言うだけあって、力の入れ方がハンパではない。

フルCGで作られたコングのリアルな描写やアクションシーンは、我が目を疑うほどのド迫力!特に、巨大恐竜と繰り広げる“怪獣プロレス”の凄まじさたるや、あまりにもスゴ過ぎて思わず笑ってしまうほどだ(全力疾走するブロントサウルスの群れが、次々と将棋倒しになるシーンなんてサイコー!)。

また、1933年のニューヨークを忠実に再現したビジュアルも実に素晴らしい。当時の資料をかき集め、9万棟以上のビルをCGで作り出し、車や衣装や小道具なども全て30年代の本物を用意。

挙句の果てには、広大な土地に「ニューヨークの大通りのオープンセット」まで作ってしまうというこだわりようで、開いた口が塞がらない。掛かった費用はなんと『タイタニック』を抜いて、史上最高の3億ドル!まさに、「思い入れの成せるワザ」と言えるだろう。

しかし、気になる事が一つだけある。3時間超という上映時間がどう考えても長過ぎるように思うのだ。ストーリーの流れを見てみると、「スカル島に到着するまで」の導入部分、「スカル島における展開」の中盤部分、そして「ニューヨークでコングが暴れ回る」後半部分という、3つのパートに分かれているが、導入と中盤部分が妙に長いのである。

まず、キャラクターの紹介が長い。原因は、余計な登場人物が多すぎるからだろう。この映画で最も監督が描きたいもの、そして最も観客が観たいと思っているものは言うまでも無く「キング・コング」である。ならば、アン・ダロウとカール・デナムとジャック・ドリスコルの三人さえきっちり描けていれば、物語の展開上は必要十分なハズ。にもかかわらず、“その他のキャラクター”に時間を割き過ぎているのだ。

たとえば、ジミーとヘイズのエピソードなんてあんなに時間を掛ける必然性があるのだろうか?船長にしても、登場シーンが多い割には、大してストーリーに絡んでこない。おまけに、原住民が出てくるシーンでは同じショットを何度も繰り返すリフレイン効果が異常にうっとおしいなど、いたるところに間延びした演出が見受けられる。これらの、「キャラクター毎の無駄なエピソード」をどんどん排除していけば、恐らく30分は短縮できたハズだ。

さらに、中盤に入ってからはもっと「どうでもいいシーン」が続出する。首長恐竜の大群に襲われたり、でかいイグアナに追い掛けられたり、巨大昆虫に襲撃されたり、ティラノサウルス3匹と格闘したりと、まさに見せ場の連続だ。それはいいんだけど、一つ一つのシークエンスがちょっとクドいんじゃないだろうか?

コングがティラと戦うシーンなんて、最初は「うわあ、すげえ!良く出来てるなあ!」と感心して観ていたのだが、だんだん「これって、いつまで続くんだろう?」とウンザリしてくる。

“手に汗握る名場面”というのは、瞬間的にテンションが高揚するからこそ効果的なのであって、延々観せられると徐々に感覚がマヒしてくるものだ。まるで、「高い所から落下し続けるジェットコースター」に乗っているようなメリハリの無さ。「全編クライマックス」と言えば聞こえはいいが、“上がったり下がったりのバランス”が一番大事だと思うんだが。

また、ジャックたちが巨大な昆虫の群れに襲われる気持ち悪いシーンもやたらと長い。はっきり言って丸ごとカットしても、ストーリーの進行上は何の支障も無い場面だ。ここも迷わずカットすべきだろう(余談だが、ここに出てくるヘンテコな生物たちはどう見ても地球上の生命体では有り得ない。宇宙生物、いや異次元の生き物の可能性すらある。「でかいゴリラ」なんかより、こっちを持って帰った方がよかったんじゃないか?)。

という具合に「無駄なアクションシーン」を次々とカットしていけば、多分15分は短縮できるハズ。前半と合わせれば計45分も短く出来る計算となる。つまり、『キング・コング』は正味2時間20分ぐらいで妥当な長さだという事だ。欲を言えば、何とか2時間以内に収めてもらいたいものである(けど、後半部分はコングが暴れるクライマックスのエピソードのみなので、カットできるシーンはほとんど無いが)。

そもそも、オリジナルの『キング・コング』(33年)が100分しかないのに、なんでリメイクしたら188分になってしまうのかワケが分からない(ジョン・ギラーミン版の『キング・コング』(76年)でさえ134分なのに)。つまり、88分の中にピーター・ジャクソン監督の「溢れんばかりの思い入れ」がぎっちり詰まっているという事なんだろうなあ。気持ちは分かるが、もう少しコンパクトにまとめてくれれば、手頃な娯楽作品として楽しめるのにねえ。

あと一つ気になったのが、予告編である。僕の記憶ではたしか、スカル島へ上陸した一行が海岸で映画を撮影しているシーンがあったと思うんだが。アンが「キャーッ!」と絶叫する声に答えるように、コングの咆哮が鳴り響くという場面。どういうわけか本編には全然出てこなかったんだけど、もしかしてあそこをカットしたのか?だったら、もっと他にカットするシーンは一杯あるだろ!?この辺の“取捨選択の基準”もさっぱり分かりません。

ちなみに、なぜ僕がこんなに上映時間の長さぐらいでグダグダ言っているのかというと、「もったいない」と思うからだ。本作は鳴り物入りで日本公開されたものの、いきなり初登場第3位というショボいランキングに関係者たちは驚愕。全国のスクリーン数が709と超拡大ロードショーにもかかわらず、初日2日間の動員数が23万7156人、興収で3億1312万円といまいちパっとしないスタートを切るハメになってしまった。

これには3日間の先行上映も含まれるらしいので、3億ドルの製作費を考えればかなり厳しい数字だと言わざるを得ない。おまけに、2週目で早くも5位に転落するという大惨敗を喫している。最終的な興収は当初の予想を大きく下回り、30億円程度に止まるのではないかと言われているほどだ。

映画がつまらなくてヒットしていないのであれば、別に問題はない。ところが、本作を観た人の評判はかなり良く、僕自身も面白いと思ったし、そこそこ観客も入っているのだ。にもかかわらず、なぜ興行収入が芳しくないのか?その原因こそが“上映時間の長さ”にあると僕は思っている。

「一日に上映できる映画の回数」は、映画の上映時間で決まってくるのだ。つまり、劇場が開いてから終了するまでの間に、2時間の映画なら4回以上上映できる。しかし、3時間を超えると、劇場によっては一日2回しか上映できない(僕が行った映画館も2回のみ)。すなわち、たとえ劇場が満員になったとしても、一日の売り上げは倍以上違ってくるのである。これが“尺が長い映画”における最大の問題点だ。

また、映画マニアはともかく、長い映画はライトユーザーに嫌われる傾向にあるという。ギリギリ2時間までなら次の上映まで待ってくれるが、3時間を超えると「他へ行こうか」となってしまうからだ。このため、映画のプロデューサーは常に監督に対して、1分1秒でも「カットしろ!」と要求してくるワケだ(短かけりゃいい、ってもんでもないけどね)。基本的に、長い映画はヒットし難い傾向にあり、『タイタニック』の大ヒットなんて例外中の例外なのである。

尚、誤解の無いように言っておくが、僕は別に「長い映画はダメだ」と言っているワケではない。ただ、長い映画は必然的に“上映回数の制限”というデメリットが生じるため、「興行成績的には不利になる可能性が高い」と言いたいだけなのだ。映画の出来と長さは、直接的には関係無いと思う。要は、“内容に見合った長さ”であれば良いのである。

だが、『キング・コング』の内容は長さに見合っていると言えるのだろうか?あの程度のストーリーを語るために、本当に3時間以上もの長さが必要だったのだろうか?冷静に振り返ってみれば、あまりの内容の薄さに愕然とするはずだ。単に、ピーター・ジャクソンの“原作に対するリスペクト”が暴走し過ぎただけ、という気がするんだが。なので、「実にもったいない」と思わずにはいられないのである。

しかしまあ、なんだかんだ言いつつも気になったのは時間の長さだけで、エンターテイメントとしては間違いなく面白い。少なくとも、映像的な迫力に関しては、現時点でのトップクラスにある事は明らかだ。TVの小さい画面で観るよりは、劇場で観るべし!

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