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ジェニファー・コネリー主演『ダーク・ウォーター』感想

■あらすじ『離婚調停中のダリア(ジェニファー・コネリー)は、最愛の娘セシリアの親権を得るため、家賃の高いマンハッタンを離れ、集合住宅がひしめく殺伐としたルーズベルト島の、古びたアパートへ引っ越した。暗く不気味な建物に違和感を覚えつつ、新生活を始めたダリアとセシリア。しかし、部屋の天井に広がる黒い染みや、奇妙な水の事故、階上から聞こえる足音に不安を感じたダリアは、親権を奪われるプレッシャーと偏頭痛に悩まされ、やがて悪夢を見るようになる・・・!鈴木光司原作、中田秀夫監督のジャパニーズ・ホラー『仄暗い水の底から』を、『モーターサイクル・ダイアリーズ』のウォルター・サレス監督が舞台をニューヨークに移してリメイクした新感覚ホラー!』


『リング』『呪怨』に続くジャパニーズ・ホラーのリメイク第3弾となる本作。前の2作がリメイクものとしてはちょっと微妙な出来だったので、今回もそれほど期待しないで観に行ったのだが意外と面白かった。だが、これを“ホラー”と呼ぶには多少抵抗がある。なんせ、全くと言って良いほど怖くないからだ。むしろ“ホラー映画”と思って観に行くと肩透かしを食らうかもしれない。

しかし考えてみればそれも道理で、『リング』『呪怨』には、「観ている観客をとことん怖がらせてやろう!」という明確なコンセプトがあったのだ。それをバージョンアップさせたハリウッド版はさらにショックシーンに金をかけ、徹底的に「恐怖」という部分を追及した正真正銘の“ホラー映画”だったのである。

ところが『ダーク・ウォーター』の場合は、原作の『仄暗い水の底から』自体がホラーをメインとせず、“悲しい女性の物語”をメインとしているのだ(もちろん怖いシーンはちゃんとあるけど)。当然、ハリウッド版もそのコンセプトをしっかり受け継ぎ、“悲劇的なドラマ”という部分を強調しているワケだが、逆に“ホラー”部分は抑え気味となっている。どちらかと言えば“心理スリラー”という感じだ。しかも、“母と娘の愛情”をテーマとしているので、かなり泣けるストーリー展開となっているのが大きな特徴(子役の演技が猛烈に上手くて、更に泣けます!)。

また、脇を固める役者陣も実力派を揃えているところが見所と言える。いかにも商売人で調子のいい不動産業者のジョン・C・ライリー、見るからに怪しい管理人にピース・ポスルスウェイト、そして一癖も二癖もありそうな胡散臭い弁護士にティム・ロス。ついでに、離婚調停中の夫にダグレイ・スコットをキャスティング(微妙な配役だなあ)。

一方、ヴィジュアル的には、とてもハリウッド作品とは思えないほど湿度が高くて鬱陶しい。終始雨が降り続き、晴れ間はほとんど見えないばかりか、なんと部屋の中まで水浸しだ。こんなアパート、幽霊が出なくても住みたくないぞ(笑)。特に酷いのは薄暗い地下のコインランドリーである。「こんな所で洗濯なんか出来るか!」っていうぐらい気持ち悪い。とは言え、オリジナル版の“ジメジメ感”を忠実に再現している事は間違いないので、リメイクものとしては上出来ではないだろうか。

ストーリーに関してもオリジナルとほぼ同じだが、後半からラストへの展開はかなり変更が加えられている。原作ではエピローグ部分が長かったが、本作では大幅にカットされているのだ。その代わり、ハリウッド版の方が“母と娘の愛情”というテーマがより明確になっていると思う。特に最後の“エレベーターのシーン”は、原作よりも更にダイレクトに“母の優しさ”が伝わってくる名場面と言えるだろう。確かに、“泣けるホラー”という触れ込みはウソではなかった。

しかし、「どちらが怖いか?」という点で比較した場合、明らかに日本版の方が怖い。正統派ホラーとしてのオリジナル版を取るか、ヒューマン・ドラマとしてのハリウッド版を取るかで評価は分かれると思う。が、個人的にはハリウッド版に軍配を上げたいなあ。オリジナル版の少女はあのエンディングを見る限り、きっと一人ぼっちで寂しい子供時代を過ごしたに違いない。

それに対して、ハリウッド版のラストは“救い”を持たせる終わり方となっている。母親の愛情を信じ、「一人でも強く逞しく、今後の人生を生きていける」と思わせてくれるのだ。上手く“いいお話”としてまとめている所に好感が持てる。ちなみに、日本公開初登場第11位でベスト10にも入らなかったのはちょっと意外だった。それほど悪い出来じゃないと思うけどなあ。


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