ああ、いかんいかん。また買ってしまいましたよ、映画関係の本を。今回買ったのは絵コンテ集(画コンテ)です。絵コンテとは、脚本からヴィジュアルの元となる要素を絵として描き出し、アングルやカメラの動き、俳優の芝居までをコマ割りにしたものを指します。
この絵コンテによって、監督や演出家の意図を第三者に知らしめ、スタッフとの意思統一を図り、全員で一つの映画を作る事が出来るワケで、まさに「映画の設計図」とでも呼ぶべき重要なアイテムであると言えるでしょう。
で、僕はこの絵コンテを読むのが大好きなのですよ。なぜなら絵コンテには監督の演出意図が詳細に記されており、それを読む事によって各カットの意味がより明確に把握できるからです。
普通に映画を観ているだけでは良く分からなかったシーンも、絵コンテを見る事によって始めて「なるほど、そういう意味だったのか!」と新事実が判明する場合もあるので侮れません。そんなワケで、絵コンテを見つけるとついつい買いたくなってしまうのです。
ローレライ
ところが、日本の映画制作現場では絵コンテが使用される事はほとんどないんですよね。セットを組み、俳優をそこに立たせれば、あとは現場のフィーリングのみで撮影していく、というのが昔からのやり方だからです。
怪獣映画など特撮を多用した作品の場合は、VFXと俳優との絡みがあるので必然的にコンテを切らなければなりませんが、それでも俳優だけのシーンではコンテを切らないのが普通らしい。
確か、故・黒澤明監督は撮影時に自ら描いた絵コンテを使っていたと聞いた事がありますが(イメージボードだったかな?)、一般的には日本の実写映画で絵コンテを使用する事などほぼ皆無だそうです。
ただし、『スウィングガールズ』の矢口史靖監督などは、撮影前に必ず絵コンテを描いているらしいので、監督によっては描く場合もあるのかもしれません。
ローレライ
とは言え、どんな映画でも絵コンテを切るのが当たり前なハリウッドに対し、日本の場合は基本的に特撮映画とアニメーションだけしか絵コンテを切らないのです。したがって購入する絵コンテも必然的に特撮&アニメが多くなってしまうわけで。
その中で僕のお薦めは、徳間書店から出版されている宮崎駿監督作品の絵コンテ集。宮崎監督自身がキャラクターの心理状態まで細かく描き込んでいて、読み物としても非常に面白い絵コンテとなっています。昔文庫で出ていたものが、今はしっかりした本になっているのは嬉しいのですが、でかくて置き場所に困るのが難点ですね。
また大友克洋監督の『AKIRA』の絵コンテ集も“圧巻”と言わねばなりません。普通はラフに描くハズの絵コンテを、驚くべき緻密さで全ページに渡ってびっしりと描き込んでいるのですから凄すぎる!あまりにも絵が上手いため、演出家が拡大コピーしてそのままレイアウトとして使っていたという逸話まで残っているほどです(『スチーム・ボーイ』の絵コンテも700ページを越える物凄いボリュームで圧倒されますよ)。
スチーム・ボーイ
特にレギオン戦のクライマックスで、「凄すぎてとても絵には描けない」とコンテにわざわざ注意書きしてあるところは笑いました(笑)。黒澤明監督の『椿三十郎』では、クライマックスシーンが「凄すぎてとても筆では書けない」と脚本に書かれてあったそうですが、それのパロディでしょうか?
ガメラ
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