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ジョン・ランディス監督『狼男アメリカン』映画感想

■あらすじ『イングランドの北部を旅行中の2人のアメリカ人、デビッド(デビッド・ノートン)と親友のジャック(グリフィン・ダン)は、満月の夜に荒涼とした厳寒の地をさまよいながら、早く宿を見つけようと焦っていた。そしてたまたま入ったパブの人々から2人は、「道路を歩け」「月夜に気をつけろ」という無気味な忠告を受ける。その事を気にはしながらも湿地帯にまぎれ込んでしまった2人は、やがて何者かに突然襲われた。気がつくと、デイビッドはロンドンの病院のベッドに横たわっており、ジャックは死んだと告げられる。しかし、突然デイビッドの前に死んだ筈のジャックが現れた!血にまみれた恐しい形相のジャックはデイビッドに、「俺たちを襲ったのは狼人間だ。そして、満月の夜にはお前も狼人間に変身して人間を殺すだろう。だからそうなる前に自殺しろ!」という不吉な予言を残す。どうしても信じたくないデイビット。だが、ついに満月の晩、彼の体に異変が起こってしまった!(1981年)』



夏休みなのでホラー映画を一本ご紹介(正確にはホラー・コメディか?)。本作は、狼男という古典的なモンスターを、最新の特殊メイクによって全く新しいモダン・ホラーのモンスターとして見事に蘇らせた画期的な作品だ。

オープニング直後、2人の主演俳優が歩いている場面を延々と映しているんだけど、撮影現場があまりにも寒かったために、ジャックが鼻水を垂らしてしまうのだ。それが可笑しくて必死に笑いをこらえる2人。普通ならNGになりそうなショットだが、なぜかそのまま本編に使用されていたり、変なシーンが多い。

狼男の変身シーンを手掛けたのは、特殊メイクの第一人者である巨匠リック・ベイカー。これまでの狼男映画が人間から狼に変身するシーンを、少しずつメイクを加えた映像を重ねるという多重撮影の手法で表していたのに対し、リック・ベイカーはワンシーンで変身の過程を全て見せるという荒技に挑戦したのである。

「メリメリッ!!!」と物凄い音を立てながら顔が変形し、見る見るうちに手足が伸び、湾曲する背中に体毛が生えてくるその凄まじい変身シーンは、まさに前代未聞の衝撃映像だった!同時期に撮影されたハウリングでは、ベイカーのアシスタントだったロブ・ボッディンが特殊メイクを担当しており、それを見たベイカーがあわてて変身シーンを撮り直したという逸話も残っている。

その甲斐あって、ベイカーはこの作品でアカデミー・メイクアップ賞を受賞しているのだ。この2本の映画の影響は大きく、これ以降特殊メイクや特殊効果そのものが、映画の主役を担う時代が訪れる事になった。まさに、特撮映画の流れを変えた作品であり、CG全盛の今観ても驚愕するほどの強烈なインパクトを放っている。

監督のジョン・ランディスは『ブルース・ブラザーズ』などのコメディ映画を得意とするだけあって、本作も(ホラー映画なのに)全編にわたってコミカルな要素が巧に取り入れられているのだ。特に、出てくる度に腐敗が進み、顔がボロボロになっていくジャックのキャラクターは、そのグロテスクな外観に反して実にユニークで面白い。

ほとんどガイコツ状態となったジャックがアゴをガクガクさせながら「早く死んでくれよ〜」とデイビッドに懇願するシーンは、ブラックユーモアが炸裂した名場面と言えよう(しかも、ポルノ映画を観ながらです!)。ランディスは子供の頃から狼男の大ファンで、本作にもユニバーサル・ホラーの狼男映画に対する熱いオマージュが満載である。終わり方がちょっとアレですが、「古き良きホラー映画」という感じが恐ろしくも懐かしい、僕の大好きな作品の一つです。

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