ひたすら映画を観まくるブログ

映画やアニメについて書いています

タイムリミットはたったの3日!発狂寸前のイギリス生活!

スター・ウォーズ・アーカイヴ

チュニジアから戻ったルーカスは以前にも増して陰鬱で、無口で、弱々しくなっていました。大金を掛けて海外ロケに行ったのに、予定していたショットをほとんど撮影出来なかったのですから落ち込むのも無理はありません。おまけに、留守中に泥棒に入られてビデオ機材など撮影道具一式を盗まれてしまったのですから、もう踏んだり蹴ったりです。しかし、そんな不幸のどん底みたいなルーカスにさらに追い討ちをかけるような出来事が待ち受けていました。
1976年の3月から、ルーカスは自分の嫌いな国で、彼を狂人扱いする人達に囲まれ、およそ70日間にわたって映画を撮影しなければならなかったのです。エルトリー・スタジオは、イギリスでは最も古い映画スタジオの一つですが、ゲイリー・カーツが見つけてくるまでは放置されて廃屋同然になっていました。それを格安で借り受け、サウンド・ステージをミレニアム・ファルコン号などの巨大なセットで満杯にしたのです。
こうして、イギリス人クルーを中心とした現場で撮影は開始されたのですが、日に日に雰囲気は険悪になっていきました。元々ルーカスは物静かなタイプなのですが、イギリス人の目には「静か過ぎて、何を考えているのか分からない監督」と映ってしまったのです。さらに、イギリス人スタッフは自分たちの技術に誇りを持っていたので、若いルーカスの指示を受けるのが非常に不愉快でした。その為、カメラマンや助監督と何度も衝突して、ルーカスのストレスは日を追う毎に増大していったのです。
そして、ある日とうとうカメラマンのギルバート・テイラーと、照明の当て方をめぐって大喧嘩が勃発!ルーカスはすぐにでもテイラーをクビにしたかったのですが、そんな事をすると他のスタッフも全員辞めてしまう恐れがあったので出来ません。さらに、スタッフから「現場の終業時間の5時半以降は、一切仕事は出来ない」と告げられたのです。この為、ギリギリで時間までに終わらなかった撮影は、全て次の日の朝から撮り直しになってしまいました。「ほんの4,5分のオーバーもさせてくれない為に半日も潰してしまうんだ。本当に頭にきたよ!」とルーカスは大激怒。現場のテンションは下がる一方で、ゲイリー・カーツは心身ともに疲れ切ったルーカスが自殺しないように、毎日細心の注意を払わなければなりません。
おまけに、特殊メイク担当のスチュアート・フリーボーンが過労で入院するは、特殊効果担当者は火薬の量を間違えてセット全体を爆破してしまうは、ストーム・トルーパー役のスタントマンは壁に激突して脳震盪を起こすは、ありとあらゆるトラブルがルーカスを襲いました。挙句の果てには、ダース・ベイダーが最初に登場するシーンを撮影中、マスクでほとんど周りが見えなかったデヴィッド・プラウズが宇宙船の廊下で見事に転倒し、その上に後続のストーム・トルーパーたちが次々と積み重なってしまうというコントのようなアクシデントまで発生!こうして、ただでさえ厳しかったスケジュールは、どんどん遅れていったのです。
そして、ある日ついに我慢の限界に達した20世紀フォックスから、「あと3日で全ての撮影を終了せよ!」と最終通告が来てしまいました。この時点で既にスケジュールは5週間も遅れており、クリスマス公開はもはや絶望的となっていたのです。そこで、スタジオは急遽来年の夏を新たな公開予定日と設定したのですが、ルーカスは大慌て!まだ2週間分の撮影がそっくり残っていたからです。たったの3日で2週間分の撮影を撮り切る為に、ルーカスはもう2組のカメラ・クルーを雇い、同時に3つのカメラ班に並行して撮影を続行させました。夏休みの宿題を最終日に必死になって仕上げる小学生のような心境でしょうか。一日中、3台のカメラをフル回転させるという、気も狂わんばかりの超ハードスケジュール!ルーカスは一瞬たりとも休む間も無く、死に物狂いでセットからセットへと走り回りました。こうして、どうにかギリギリ3日でクランクアップにこぎつける事が出来たのです。しかし、ルーカスの不運はまだまだ止まりませんでした。次回へ続きます。