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映画『逆境ナイン』島本和彦の熱血漫画を実写化!

■あらすじ『主人公は全力学園の野球部キャプテン・不屈闘志玉山鉄二)。彼の野球部は毎回地区予選一回戦敗退の弱小野球部だ。そしてついにある日、実績を重んじる校長(藤岡弘)から廃部を言い渡される。愛する野球部を絶対につぶしたくない不屈は、無謀にも校長に「甲子園出場」を誓ってしまった。イマイチやる気に欠ける部員たちを言葉巧みな屁理屈で操り、猛特訓を開始した不屈。しかし野球を知らない監督(田中直樹)の就任、様々なトラブルにさらされる部員、そして不屈自身も恋と野球の板挟みに陥るなど、次から次へと逆境に襲われてしまう。果たして彼らは強豪を打ち倒し、甲子園へ行く事が出来るのか!?吼えろ、奇跡のビクトリー!!!』



「逆境とは、思うようにならない境遇や、不運な境遇の事をいう」
こんな仰々しいフレーズで始まる本作は、映像化不可能と言われた島本和彦の伝説の原作コミックスを、『海猿』の羽住英一郎監督が映画化したものだ。観る前は、「野球をベースにしたコメディ・タッチの単なるスポ根映画」かと思っていたが、とんでもない!主人公の不屈闘志を始めとして、校長先生や監督など濃いキャラクターばかりが勢揃い。そんな彼らが、次から次へと“有り得ない”ギャグをぶちかますのだ!

「試験勉強をサボっていたから赤点を取った」と言う不屈に対して、マネージャーが「それは自業自得です」と当たり前の突っ込みを入れると、いきなり宇宙から“自業自得”と書かれたモノリス(?)が降ってくる!もちろん、なぜそんな物が空から降ってくるのか、説明は一切ない。要は”言葉ギャグ”の一種なのだが、力の入れ方がハンパではないのだ。

”自業自得モノリス”はそのシーンが終わった後も存在し続け、最終的には風景の一部と化してしまう(ストーリーには全く関係無いのに)。ついには、マネージャーがモップがけをする始末で、その徹底したこだわりには脱帽するしかなかった。

さらに監督が「知らぬが仏!」とか「それはそれ!これはこれ!」など役に立つのか立たないのか良く分からない“格言”を言う度に、最新VFXを駆使したド派手なエフェクトが炸裂するのだ!しょーもないギャグを表現する為だけに、全編にわたって“無駄に豪華なCG技術”が惜しげも無く大量投入された、まさに抱腹絶倒の快作である。だが、こういうクダラナイ事に全身全霊を懸けて取り組んでいる姿勢が、「バカバカしさ」を通り越してある種の「清々しさ」さえ感じさせるのだ

また、現実離れしたキャラクターを大真面目に演じ切った役者たちの熱演も特筆に値する。玉山鉄二が演じる不屈闘志は、端正な顔立ちとハチャメチャな行動とのギャップが面白い。藤岡弘の校長は凄まじい存在感で観る者を圧倒し、時々言い放つ重みがあるような無いようなセリフの数々に爆笑(「でかい」って何が?)。

特に、不屈とマネージャーと3人で海辺を楽しそうに走る場面の衝撃度はメガトン級の破壊力!なぜ校長が!?そして、一番ワケが分からないのが田中直樹演じる謎の監督である。「野球の事は全く知らない野球部監督」という意味不明のこの人物は、いきなり覆面レスラーみたいなマスクを被って登場し、観客の度肝を抜きまくる!

さらに、更衣室で着替え中の主人公の背後に忍び寄り、”野球”と”女”と書かれた二つの札を取り出し、「どちらかを選べ!」と迫るのだ。しかも、鏡に映して読めるように、文字が逆向きに書いてある(芸が細かい!)。はっきり言って「ココリコミラクルタイプ」の田中にしか見えないのだが、単なるコントとして見ても十分に面白いのだ*1

しかし、『逆境ナイン』の本当の凄さは、クライマックスに訪れる。地区予選決勝、相手チームは強豪の日の出商業高校だ。その9回裏、点差は112対0(!)という、もはやどう考えても逆転不可能な絶体絶命の大ピンチ!だが、そんな絶望的な状況の中でも主人公は「たかが112点差だッ!」と勝つ気満々に言い放つ。

うわあああ!バカだ!でも猛烈にカッコいい!この「どんな事があろうとも、決してあきらめない!」という揺るぎ無い前向きなマインドこそが本作の真骨頂であり、「究極のポジティブ・シンキングこそが不可能を可能にする!」という力強いメッセージが観る者の心を捕らえて放さないのだ。

荒唐無稽なドラマを勢いだけで引っ張っている本作だが、主人公たちの「微かな希望を信じて、ボロボロになりながらも最後まで戦い抜こうとする姿」は、バカバカしいと同時に感動的なほど美しい!はっ!気が付いたらいつの間にか涙が!何で俺はこんな映画で泣いてるんだ!?『逆境ナイン』恐るべし!ラストのオチにもう一捻りあれば、尚良かったのになあ。

この作品を一言で表現するならば、「熱く、バカバカしく、笑って泣ける」そんな素晴らしい娯楽映画である。まさに爆笑青春エンターテイメントの傑作だ!ちなみに、『少林サッカー』と『カンフー・ハッスル』が「受け入れられない!」という人には無理にオススメしません(笑)。


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*1:と思ったら、本作の脚本を書いた人はホントに「ココリコミラクルタイプ」の構成作家だった