ひたすら映画を観まくるブログ

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ジェット・リー主演『ダニー・ザ・ドッグ』

ダニー・ザ・ドッグ

■あらすじ『5歳の時に誘拐され、闘犬として育てられたダニー(ジェット・リー)は、高利貸しのバート(ボブ・ホスキンス)に連れられ、毎日闘いに明け暮れていた。首輪を付けられ、感情さえも忘れていたダニーは、ある日、事故で視力を失ったピアノ調律師、サム(モーガン・フリーマン)と出会う。数日後、バートとダニーが乗る車にトレーラーが突っ込み、なんとか命拾いしたダニーは、サムの元へ辿りつく。回復したダニーは、サムと、サムの娘ヴィクトリアの元で暮すうちに、次第に人間らしさを取り戻していく。やがて明かされる衝撃の過去。母の記憶を取り戻すため、愛する人を守るため、ダニーの最後の闘いが始まろうとしていた。愛は人をどこまでも強くする・・・涙と感動のアクション超大作!』



中国が生んだ世界的アクション・スター、ジェット・リーの劇場最新作である。「幼い頃から殺人マシーンとして育てられた男が、次第に人間の心を取り戻す」というあらすじを聞いた瞬間、嫌な予感にとらわれたが、やはり脚本を書いたのはリュック・ベッソンだった、あ〜あ・・・。

このコンビで作られたキス・オブ・ザ・ドラゴンという映画を以前観た事があるが、どんな内容だったか全然記憶に無い。「どうせリュック・ベッソンだからなあ・・・」と期待値は限りなくゼロに近かったが、久しぶりのジェット・リーだし、アクション監督がユエン・ウーピンなのでとりあえず観に行く事にした。その結果は…

「あれ?意外と面白い……かも?」いや、もちろんベッソンの脚本の支離滅裂ぶりは相変わらずなんだけど、今回は“普通にストーリーが理解できる”のである。これは一体、どうした事だ?監督のルイ・レテリエの実力か?でも、『トランスポーター』も結構ムチャな映画だったけどなあ(って、あれもリュック・ベッソンの脚本だよ、トホホ)。

となると、やはり理由はあの男か。最近、どの映画を観ても必ず出ている(ような気がする)、“出たがり俳優”モーガン・フリーマンしかし、まさかこんな映画にまで出演しているとは思わなかった。しかも演じるキャラクターが「盲目の黒人ピアニスト」って、なんかどこかで聞いた事があるんですけど・・・

だが、彼が出ているだけで、こんなハチャメチャな物語が感動大作のように思えてしまうのだから、やはり凄いとしか言いようがない。現実離れしたストーリーが、たちまちリアリティを帯びてくるのだ。さすが、アカデミー賞俳優は違うなあ。ダニーがサムと出会って次第に心を通わせていく様子も、コミカルに描写されていて実に面白い。おお、ジェット・リーがちゃんと演技をしているぞ!これも、モーガン・フリーマンの演技力に引っ張られたおかげなのか?素晴らしい!

要するに、アクション映画はアクション以外のシーンをいかに持たせるか、という部分が重要なのだ。今までのリュック・ベッソンの映画って、アクションシーンは見応えがあるんだけど、それ以外のシーンが全くダメなので、全体的に評価が低かったのである。それが今回、ドラマのシーンが普通に楽しめるのだ。これは大変な進化と言えるのではないだろうか。

また肝心のアクションも、ジェット・リーの実力を如何無く発揮した、非常に安定感のある迫力満点の格闘シーンに仕上がっている。ただ、ユエン・ウーピンにしては多少派手さに欠ける感じがしたのだが、これは、ワイヤーワークを極力抑えた本格カンフー・アクションとしての動きを優先しているからだろう。やや地味に見えるかもしれないが、無駄の無いジェット・リーの体術は、ストリートファイトを彷彿とさせて実にカッコいい。必見です!

中でも僕が一番驚いた場面は“トイレの中でのカンフー・アクション”である。なんと、家庭の狭苦しい普通のトイレに大の大人が二人も入って、激しいアクションを展開するのだ!トイレですよトイレ。ありえねえ!僕の記憶に間違いが無ければ、恐らく「アクション映画史上、最も狭い空間における格闘シーン」だと思う。よくあんな場所で動けるなあ!

総合的に見て、本作は設定や物語に穴が多い(バートはあんな重傷を負いながら、なぜピンピンしてるんだ?とか。不死身なのか?)。しかし、それらの問題点は「脚本を書いたのがリュック・ベッソンだから」という事でどうか見逃して頂きたい(笑)。むしろ、ベッソンが脚本を書きながら、よくぞここまで辻褄の合った映画を作ったものだと誉めたいぐらいだ。

すなわち結論は、「ストーリーや設定の穴を気にしなければ、そこそこ楽しめる映画である」という事です。細かい事に突っ込んじゃいけません。海のような広〜い心で観て下さい(笑)。