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庵野秀明、『風の谷のナウシカ』を熱く語る

風の谷のナウシカ
映画『風の谷のナウシカ』より
■あらすじ『かつて人類は自然を征服し繁栄をきわめたが、「火の7日間」と呼ばれる大戦争で産業文明は壊滅した。それからおよそ千年、わずかに生き残った人類は巨大な蟲類が棲み、有毒な瘴気を発する菌類の広大な森・腐海に征服されようとしていた。腐海のほとりに、海からの風によって瘴気から守られている小国・「風の谷」があった。その族長ジルの娘ナウシカは、巨大な蟲・王蟲(オーム)と心をかよわせる不思議な親和力を持っていた。ある夜、風の谷に巨大な輸送機が墜落し、巨大な血管のかたまりのようなものが発見された。それは、「火の7日間」で世界を焼き尽くしたという超兵器・“巨神兵”だった。ペジテ市の地下から掘り出され、それを奪い取った世界統一の野望を持つトルメキア王国が、輸送中墜落したのである。墜落を知ったトルメキアの皇女クシャナは、大編隊を風の谷に送り込み、ジルを殺しナウシカを人質として連れ去った。だがトルメキアの船はペジテのアスベルに襲われ、墜落してしまう。ナウシカ腐海に落ちたアスベルを救出し、そこで腐海の“秘密”を知ってしまった。果たして残された人類の運命は…!巨匠:宮崎駿が「アニメージュ」に連載していた同名マンガを自ら映画化した、ファンタジー・アニメの金字塔!』



もはや、説明不要の傑作長編アニメーション『風の谷のナウシカ』。宮崎駿といえば本作を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。ちなみに、僕の中ではラピュタ』『カリオストロ』『ナウシカの順番で好き。しかし、劇場公開時はその存在を全然知らなくて、『ナウシカ』を観たのもかなり後になってからだったと思う。僕が一番最初に映画館で観た宮崎アニメは『天空の城ラピュタ』だった。

当時、そのあまりの面白さにぶったまげた僕は3回連続で観てしまい、その後「宮崎駿という監督は何者だ!?」とばかりに『カリオストロ』『ナウシカ』と立て続けに鑑賞して、すっかり宮崎アニメの虜になってしまったのである。今回、久しぶりに『ナウシカ』を観たんだけどやっぱり面白いね。「活劇モノ」のお手本のような映画だ。

主人公のナウシカをはじめ、クシャナやユパ様など魅力的なキャラクターも満載で、誰が観ても楽しめる作りになっているのが凄い。中でも僕が気に入っているのはクロトワだ。クシャナの参謀役として采配を振るいながら、その言動はどこかとぼけていて憎めないキャラなのだ。

「ケッ!笑ってやがる」
「テメェなんざ、この世の終わりまで地下で眠ってりゃあ良かったんだよ!」
「うだつの上がらねぇ平民出の俺に、やっと巡ってきた幸運か?それとも破滅の罠か?」
「生きてたよ…。みじけぇ夢だったなァ」
「何があったか知らねぇが、可愛くなっちゃってまあ」
「バカ野郎、逃げるったってオマエ、どこへ逃げるってんだよ!」
「くさってやがる!早過ぎたんだ…」


などなど彼のセリフ回しはどれも妙に味があって面白い!特に「くさってやがる!」は名ゼリフ。僕も色んな所でマネしてました(笑)。まあ、内容についてはみんな知っているだろうし、今更僕が言う事も特に無いので、今回はDVDの特典に収録されている庵野秀明のコメントについて書いてみたいと思う。ご存知の人も多いと思うが、駆け出しアニメーターの頃の庵野氏は『ナウシカ』に作画スタッフとして参加していたのだ。

しかし、当時の庵野氏は自主制作アニメDAICONとTVアニメマクロスしか経験が無いド新人であった。それが、宮崎監督に会いに行っていきなり採用になったというのだから凄い話だ。庵野氏曰く「当時のスタジオはよっぽど人手不足だったんでしょうね」との事。DVDには、そんな庵野氏が『ナウシカ』制作時の様子を振り返りながら、面白おかしくコメントしている様子が収録されている。「アニメーターの視点から『ナウシカ』を観たらこうなる」という部分がなかなか興味深くて面白い。



●冒頭、ナウシカがオームの抜け殻を見つけるシーン
「昔から気になってたんだけど、オームはどうやって殻から抜けてるんだろう?背中が割れてないのに」


●暴走するオームを発見するシーン
「この辺は、なかむらたかしさんの原画だ。破片の表現が上手いね」


ナウシカが風の谷に帰ってきたシーン
「子供の絵がピタっと止まってるのはいかがなものかと(笑)。少しは動かして欲しい」


●トルメキアの輸送機が墜落するシーン
「この辺から金田伊功さんが原画をやってる。やっぱり全然絵が違うよ。宮崎さんも修正し切れてない」


●輸送機が大爆発するシーン
「あああ!なんてかっこいい煙の表現なんだろう!ここの爆発の原画は描きたかったなあ」


ナウシカがオームと飛ぶシーン
「うわあ、宮崎さんスタッフにメチャクチャやらせてるよ、この引きのシーン(笑)。ここで斜めに引きますか!?」


●トルメキアの飛行機が、編隊を組んで飛んでくるシーン
「ここのマルチもヒドい事やらせてるなあ(笑)。もうちょっと撮影の人の苦労とか、考えないのかね?」


ガンシップを積み込むシーン
「もうムゴ過ぎる。軸線を変えるのがいかに大変かという事を全然考えてない。よく平気でこんな事やらせるよなあ(笑)」


●隠し部屋のシーン
「たったこれだけで水の動きを表現しているのが凄い。宮崎さんは手抜きの天才だ(笑)」


ナウシカがトルメキア軍の飛行機に乗り込むシーン
「改めて見ると飛行機のディテールが結構雑だね。良くこんな絵でOK出したなあ」


●アスベルがトルメキアの飛行機を攻撃するシーン
「やっぱり、金田さんの原画は一目でわかるね。敵の兵士がいい味出してる(笑)」
「ああ、この辺の原画はやりたかったなあ。巨神兵の原画がもうちょっと早く終わってりゃ手伝えたのになあ」


ナウシカたちが腐海へ落ちていくシーン
「こういうオプチカル処理は、今はデジタルで簡単にできるんだけど、逆に空気感みたいなものが無くなっていい味が出ないんだよね」


ナウシカがアスベルを助けるシーン
「胸の表現が意外といやらしい。ナウシカって結構セックスアピールしてたんだね(笑)」


ナウシカとアスベルが会話するシーン
「このセリフをあのオヤジが考えたとは!ジジイ〜!」


ナウシカとアスベルがチコの実を食べるシーン
「以前、宮崎さんに回転ズシをおごって貰った事があるんだけど、物凄いスピードで食うんだよ。こっちがまだ食べてるのに“いつまで食ってるんだ!もう行くぞ!”って。宮崎さんにとって、食事はガソリン補給と同じなんだよね」


巨神兵を復活させようとしているシーン
「この辺は僕が描いてる。でも僕が描いたキャラだけ、修正が入ってない。ちゃんと直してよ!」「ああ、ケムリをもう少ししっかり描いておけばよかった。申し訳ありません!」


ナウシカが捕まるシーン
「この当時、宮崎さんは結構精神的に追い詰められてたと思う。“東京に大地震が起きたらもう映画を作らなくてすむのに”とかブツブツ言ってた」


●アスベルが助けようとするシーン
ナウシカの胸の揺れ方が素晴らしい(笑)。女の子の胸を最初に揺らしたのは宮崎さんじゃないかと思う」


●部屋にナウシカが監禁されているシーン
「宮崎さんは、人のカセットテープを勝手に借りて、毎日毎日同じ音楽をひたすら聞きまくってた。で、テープが伸びて聞けなくなったら“もうダメになったから返す”とか言って返してくる。ひでえオヤジですよ、ホントに!(笑)」


●ユパが飛行機に飛び移るシーン
「ユパ様のポーズがおかしい。ここだけ急にマンガになってる。あれじゃ、石川五右衛門だよ(笑)」


●オームの子供を助けるシーン
素手で銃を持つのは危ないよナウシカ。ヤケドしちゃう(笑)」


巨神兵のシーン

「これはホントに苦労したなあ。8秒のシーンに一週間かかった。朝から晩まで延々やってたよ。ビームは修正されずにそのまま通された。たぶん宮崎さんも、直すのが面倒くさかったんだろうね。“これで失敗したら全部お前のせいだからな!”ってヒドい事言われた(笑)」
「それでも爆発のタイミングとか、2カットほど修正されてたんだけど、動画チェックの段階でそれを見つけて、宮崎さんが帰った後にこっそり自分で描き直したりしてた(笑)」
「手前のクシャナも最初は僕が描いてたんだけど、あんまりヘタなんでとうとう宮崎さんがブチ切れて(笑)。“もういい、俺が描く!”って、第二原画で全部修正されたよ」
巨神兵の動画は中5(なかご)にしろって宮崎さんに言われたけど、今でも中7(なかなな)にすれば良かったと後悔してる」


※このシーンはよほど悔しかったらしく、以前NHKの情報番組『トップランナー』に出演した時もこれと同様の発言をしている↓

司会者:「え?あのシーン、失敗ですか?」


庵野:「失敗です。細かい事ですけれど、原画と原画の間に、動画が3つで中5枚なんですよ。宮崎監督の指示で、“これ中5(なかご)でいい”と言うんで、素直に中5にしたんですけど。なんであの時抵抗して、中7(なかなな)にしなかったんだろうって…今でも後悔してます。枚数増えて大変なのは分かるけど、中7にした方が絶対に良かった。ありゃ、溶けるのが早すぎますね」


司会者:「庵野さんのイメージではもうちょっと、こう…」


庵野:「もう2枚、間にもう6コマで中7枚あれば良かったんです。そうすれば、完璧だったんですけど。あれは今でも悔しいですね。あのラッシュを見た時、死にたくなりました。もう失敗した〜って。他の人が褒めてくれる分、余計に辛かったですね。もっと良くなったハズなのに…。あれから宮崎さんの云うことを聞かなくなったんです」(会場爆笑)


ナウシカがオームに弾き飛ばされるシーン
ナウシカはどうやって助かったんだろう?戦車も全部踏み潰されてるのに、助かるハズないよ」


●オームが爆走するシーン
「あらゆるものを踏み潰してるのに、巨神兵だけ腐ってて臭いから、みんな避けて通ってる(笑)。かわいそうだなあ」


こうして庵野氏のコメントを書き出してみると、何だか宮崎監督の悪口ばかり言っているように思えるがそうではない。以前、インタビューを受けた時も、宮崎監督に対して最大限のリスペクトを表明しているのだ。

「宮崎さんは、僕の師匠です。本当に凄い人ですよ。特にアニメーターとしては天才ですね。スピードもアイデアもテクニックも。後は思想的な部分、物の作り方とか考え方とか、技術的な事まで含めて。僕はかなり影響を受けてます」


実際、二人は一緒に旅行に出かけたり、庵野氏が結婚する際は宮崎監督が仲人を務めるなど、かなり仲がいいらしい。プライベートでも親しく付き合っている庵野秀明だからこそ、尊敬の念を込めて宮崎監督の仕事ぶりを揶揄しているのである。

一方、宮崎監督もそんなかわいい弟子(?)に対して、愛が溢れるコメントを連発している。
「『エヴァンゲリオン』は病気の人間が病気の人間に向けて作った映画で、病気が集まっている映画だと思います」(「週刊プレイボーイ」97年7月22日号)
「『エヴァンゲリオン』は3分と観てられないですね。観るに堪えない映画ですよ」(「Cut」97年9月号)


う〜ん、本当に仲がいいのだろうか?(^_^;)


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