ひたすら映画を観まくるブログ

映画やアニメについて書いています

クリストファー・ノーラン監督『バットマンビギンズ』映画感想

バットマンビギンズ

■あらすじ『ゴッサム・シティの大富豪の御曹司として、幸せな少年時代をおくっていたブルース・ウェインの人生は、目の前で両親が殺されて以来、一変した。悲劇の発端を招いてしまった罪悪感、抑えがたい犯人への復讐心、父から受け継いだ善行への使命。さまざまな葛藤を抱え、ブルースは世界を放浪する旅に出る。ヒマラヤの奥地で“影の同盟”を名乗るデュカードという人物に出会ったブルースは、彼に師事して心身を鍛錬。数年ぶりにゴッサムに戻ったブルースは、自らの全てを賭け、悪と闘うことを決意する。闇の番人、バットマン誕生の瞬間だった!』



まずは、アメコミ映画としては近年稀に見る豪華なキャスティングに驚いた。クリスチャン・ベールマイケル・ケインリーアム・ニーソン渡辺謙ゲイリー・オールドマンモーガン・フリーマンルトガー・ハウアーケイティ・ホームズと、そうそうたる顔ぶれがズラリと並ぶ。

中でも主人公のブルース・ウェインを演じたクリスチャン・ベールは、僕が大好きな俳優の一人だ。なぜなら彼は大傑作SFアクション映画(と思っているのは世界中で僕だけかもしれないが)リベリオンの主役を演じたからである。

愁いを帯びた表情、無駄の無いしなやかな体の動き、そして空前絶後の最強格闘術「ガン=カタ」を駆使した凄まじいアクション!まさにクリスチャン・ベールの魅力が最大限に発揮された映画『リベリオン』。

嗚呼それなのに、パンフレットのプロフィールには「興行的には振るわなかった『リベリオン』」とか「面白いのに全くヒットしなかった『リベリオン』」とか、否定的な文章ばかりが並んでいる。

おまけにクリスチャン・ベール本人までもがインタビューで「実は以前『リベリオン』という映画に出たことがあるんだよ。あまり観た人がいない映画だけどね」と自虐的なコメントを述べているのだ。知名度の低さを自ら告白してどーすんだよ!もう悲しくて涙が出そうになったぞ。頼むからみんなもっと『リベリオン』を観てくれえええ!(ちなみに、彼のプロフィールに『ハウルの動く城』が入っていたのには驚きました)

次にゲイリー・オールドマンと言えば、僕の中では『レオン』の悪徳刑事が強烈に印象に残っている。麻薬入りカプセルをボリボリと貪り食い、クラシック音楽を聞きながら女子供を容赦無く次々と射殺していく残虐シーンを観た瞬間、「このおっさんはタダ者ではない!」と驚愕したものだ。以来、ポン引きとかテロリストとか頭のオカシイ科学者とか、イカレた役ばかりやっているので、すっかり“悪役俳優”というイメージが定着してしまった。

そんな、“アブナイおっさん”を演じさせたら右に出る者がいないゲイリー・オールドマンが『バットマン』に出演すると聞いた時、何の疑問も持たずに「バットマンの敵役だな」と思った事は当然の反応と言えるだろう。

ところがなんと演じているのは“善良な一般警察官”!「嘘だろ!?」と仰天したのは僕だけではないハズだ。竹内力が保育園の保父さんを演じるぐらいの違和感があるぞ。映画を観ている間中、「いつか敵に寝返るのではないか?」とずっと疑いっぱなしだった。どんな映画に出ようとも色んな意味でハラハラさせてくれる俳優ゲイリー・オールドマン。まったく、油断も隙も無いおっさんだ。

そしてリーアム・ニーソンと言えばジェダイ・マスター、クワイ=ガン・ジンである。今回も才能溢れる若きパダワン(ブルース・ウェイン)を相手に、ライトセーバー(剣術)の修行に明け暮れる師匠の役割なのだ。相変わらず剣術シーンが上手いなあ。「恐怖を克服せよ」という教えもジェダイと同じ。でもダークサイドに堕ちてるんだけどね(笑)。

今回唯一の日本人俳優、渡辺謙の活躍に期待している人も多いかと思う。僕もその一人だった。しかし残念ながらメチャクチャ出番が短い。『ラストサムライ』とはえらい違いだ。過度な期待はしない方が良いでしょう。ところで、ラーズ・アル・グールのヒゲって、どうやったらあんな風に生えるの?

モーガン・フリーマンと言えば『ミリオンダラー・ベイビー』が記憶に新しいが、僕の中ではショーシャンクの空にが一番印象深い。人間ドラマからSF映画、サスペンスやアクションなど、結構幅広く色んな映画に出ているが、常に抜群の存在感で自分をアピールしているところが素晴らしい。まさに名脇役だ。

そしてケイティ・ホームズと言えばトム・クルーズである(笑)。17日にパリで婚約会見を開いたばかりの新婚さんだが、もうトムが彼女にメロメロなんだそうだ。『宇宙戦争』のプロモーションもそっちのけで、ひたすらイチャついているらしい。『バットマンビギンズ』を観る限りにおいては、何がそんなにトムを夢中にさせたのか良く分からないが、まあ『スパイダーマン』のヒロインよりはマシかなと(笑)。

ところで、またもや「彼女の方がトムより背が高い」とかニュースで書かれてるけど、この先ずっと言われ続けるんだろうか?気の毒だなあ。「年齢差16歳、身長差5センチ」って大きなお世話だよ!

さて、肝心の内容の方だが、今までのシリーズとはガラリと雰囲気が変わっている為に、賛否が分かれるかもしれない。これまでの『バットマン』映画は、マンガの世界をそのまま実写に置き換えたものだったが、今回はひたすらリアルな世界観を貫いているのが特徴なのだ。

敵のキャラクターも、ジョーカーとかリドラーみたいにド派手なメイクで観る者を唖然とさせるようなヤツは出てこない。ゴッサム・シティも前作のような毒々しさは無く、荒廃した巨大都市というイメージで作られたそうだ。

ちなみに、クリストファー・ノーラン監督はブレードランナー』の大ファンで、スタッフには「『ブレードランナー』みたいな感じにしてくれ」と指示したとの事。ノーラン監督の『ブレードランナー』好きはゴッサム・シティのイメージだけに留まらず、登場人物の名前にもレイチェルやデュカード(デッカード)など『ブレードランナー』の影響が強く感じられる。

さらにレプリカントルトガー・ハウアーまで出演している事は、もはや偶然ではないだろう。また、バットモービルのデザインもスピナーからパクったという噂も…。そう言えば、前輪のデザインが同じだ!

また、撮影自体も極力CGの使用を避け、あくまでも“実物”での撮影にこだわったらしい。この為、カーアクションのシーンなど、アクション全般において撮影は困難を極めたそうだ。さらに、今回個人的に一番気になっていたのはバットモービルのデザインである。前作までの、流線型を基調としたなめらかなデザインとは対照的に、本作はやけにゴチャゴチャとした角ばったデザインになっている。

クリストファー・ノーラン監督に言わせれば「機能性と実用性を重視したデザイン」だそうだが、事前の評判があまり良くなかったので不安だったのだ。しかし、実際に動いているバット・モービルを観ると、なかなかカッコいいではないか!表面のパーツがどんな役割を果たすのかイマイチ分からんが、障害物を次々となぎ倒しながら爆走する姿は実にパワフルで気に入った。スポーツカーというよりも装甲車というイメージだけどね。

反対に、気になった点はアクションシーンのカメラワークが見づらい事だ。人物が素早く動くシーンでカメラを思い切り振り回しているので、どんなアクションなのか全然分からん。もう少し引いた画で見せて欲しい。また、ドラマをじっくり描いているのはいいけど、バットマンが現れるまでがやたらと長い。途中で『バットマン』を観ている事を忘れそうになったほどだ。

しかし、総合的に見て『バットマンビギンズ』は新しいバットマンのイメージとして、ファン以外の人にも受け入れられるのではないかと思う。僕自身、ティム・バートンの『バットマン』が好きで観ていたのだが、ジョエル・シューマッカー版になってからはすっかり観る気が失せてしまった。

『フォーエバー』のあまりのくだらなさに激怒し、『Mr.フリーズ』の正真正銘の駄作ぶりに絶望して「もう『バットマン』映画は終わった」と思っていたのだ(シューマッカーの他の映画は嫌いじゃないが、少なくとも『バットマン』に関しては弁護の余地が無いぐらいヒドいと断言できる)。

しかし、本作はそんな『バットマン』に対する不信感を払拭するには十分なほどのパワーを放っている。何より、ブルース・ウェインの常軌を逸した金持ちぶりが見ていて実に気持ちいい(笑)。もしかしてビル・ゲイツよりも金持ってるんじゃないのか?スパイダーマン』の極貧生活とはえらい違いだ(笑)。