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映画『エル・コロナド/秘境の神殿』感想

エル・コロナド/秘境の神殿

■あらすじ『婚約者がスイスに出張した後、書類を忘れた事に気がついたクレアは、ついでにクリスマスを一緒に過ごそうとスイスへ書類を届けに行く事を思いつく。観光気分でスイスに着いた彼女は婚約者に会いに行くが、なんとそこに彼の会社は無かった!びっくりした彼女は大使館へ出向き、婚約者がコロナドへ向かった事を突き止める。そこは軍事独裁政権と革命軍が闘う動乱の最中だった。婚約者を探したい一心で戦火の飛び散るコロナドへ乗り込むクレア。だがそこで彼女を待ち受けていたものは、想像を絶する衝撃の真実だった!「インデペンデンス・デイ」のスタッフたちが持てる技術の全てを集結させて作り上げた、驚異のVFXアクション・アドベンチャー超大作!』



本作は『インデペンデンス・デイ』や『GODZILLA』など、一連のローランド・エメリッヒ作品でVFXを担当したフォルカー・エンゲルが製作・脚本・VFXを担当し、同じエメリッヒ組のスタッフを総動員して製作した秘境アドベンチャーだ。

内容は『インディ・ジョーンズ』に代表される“冒険モノ”だが、とにかくVFXが凄まじい!エメリッヒ作品のようなド派手さは無いものの、映画全編にわたってほとんどのシーンで何らかの手が加えられている芸の細かさは脱帽モノだ。

高さ60メートルにも及ぶボロボロの吊橋をトラックで渡るスリリングなシーンや、ジェット戦闘機にミサイルで吹っ飛ばされるシーン、そしてクライマックスにおける戦車部隊とヘリ部隊が入り乱れた大攻防戦など、要所要所でミニチュアワークとCGがセンス良く組み合わされ、アクション・アドベンチャーに相応しい圧倒的なスケールのデカさで観る者のド肝を抜きまくる!

中でも、滝に隠された秘密基地の中から巨大な垂直離着陸機が「ゴゴゴゴゴ!」と滝を割って発進するシーンは圧巻だ。まるで「サンダーバード」を髣髴とさせるような前代未聞のカッコ良さ!う〜ん、たまらん!

しかし一番驚いたのは、これだけ大スケールの映画を作りながら、考えられないほど製作費が安かったという事である。

なにしろ本作は「『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』並の予算で、『タイタニック』クラスのクオリティを誇る作品を作り、インディペンデント映画の新しい製作体制を確立した!」と製作者が自画自賛するぐらい、掛かった費用に比べて出来上がった映画の完成度があまりにも凄過ぎるのだ。

『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』といえば、製作費わずか500万ドル*1のコメディ映画である。

ええっ、500万ドル!?てっきり“ハリウッド超大作並み”*2の予算が掛けられているかと思いきや、信じられないぐらいの超低予算映画だったのだ。

しかし、当然ながらたったの500万ドルで「アクション・アドベンチャー」を撮らなければならないスタッフの苦労はハンパではなかったようだ。とにかく、少しでもお金を節約する為に、現場では涙ぐましい努力を強いられたらしい。

合成用ブルーバック撮影がロケ先の駐車場だったり、ホテルを一軒借り切って、その場所だけでスイスのホテルから大統領宮殿までほとんど全てのシーンを撮ってしまったり、エキストラがスタッフの親戚や友達ばかりだったりと、「いきなり!黄金伝説」も真っ青な倹約テクニックが満載なのだ。

列車に跳ね飛ばされてジープがバラバラになるシーンなどは、ミニチュアを作る予算が無かったので、仕方なくスタッフが近所のオモチャ屋でプラモデルのジープを買ってくるという悲惨な有様。さらに列車の運転手をこっそり4000円で買収するというみみっちい裏工作に至っては、思わず目頭が熱くなる思いである。

挙句の果てには、『リオ・ブラボー』の歌を口ずさむシーンを撮影したものの楽曲使用料の2万ドルが払えず、泣く泣くそのシーンをカットするハメになってしまったそうだ。

まさに銭形金太郎もびっくりの超極貧エピソードの数々であり、ヘタすると自主制作映画並みの撮影環境だったんじゃないのかと思わずにはいられない。だが出来上がった映像を観ると、とてもそんな貧しい現場とは思えないほど見事なヴィジュアルが炸裂している。

つくづく「映画は金ではなく、知恵と工夫とスタッフの努力次第でいくらでもセンス溢れる作品を作る事が出来るんだ」という事実を思い知らされた。これぞまさしく究極のハイ・コストパフォーマンス・ムービーである!

*1:というか、『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』に500万ドルも掛かっているという事にちょっと驚いた。あの映画のどこにそんな金を掛けたのか?

*2:ジェームズ・キャメロンがこのクラスの映画を撮ったら、絶対に1億ドル以上掛かっていたに違いない