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ピーター・ジャクソン監督の『ブレインデッド』こんなに凄い映画だ!(ネタバレ解説)

ブレインデッド
映画『ブレインデッド』より
■あらすじ『主人公のライオネルは何でもお母さんの言う事を聞くマザコン青年。ある日彼は偶然知り合った女性と恋に落ちて、お母さんに内緒でデートに出かける事になった。しかし、嫉妬深いお母さんは二人の仲を引き裂くために後をつけ、デート先の動物園でサルに咬まれてしまう。だがそのサルはラット・モンキーという恐ろしいサルで、こいつに咬まれた人間はナゼかゾンビになってしまうのだった!やがて街中がゾンビだらけになった時、愛する彼女を守るために、ついにライオネルは立ち上がる!武器は電動芝刈り機!果たして彼と彼女のピュアな恋の行方はどうなるのか!?地元ニュージーランドでは4ヶ月のロングラン上映を記録したものの、韓国では抗議が殺到して上映禁止に追い込まれたという、史上空前のアルティメット・スプラッター・ラブコメディ!決して食事中には観ないで下さいッ!』



うわあああ!これはヒドイ!とんでもない映画を観てしまいました。「ヒドイ」というのは色々な意味がありますが、この映画の場合「駄作」という意味ではありません。「駄作」というのは、映画の完成度が著しく低かったり、我慢できないほど退屈だったり、製作者の“やる気”が感じられないダメな作品の事を指します。

しかし『ブレインデッド』の場合は、“やる気”のベクトルが完全に暴走しまくり、映画自体が途方もないところへ行き着いてしまっているのが問題なのですよ。本作は、某映画祭において審査員全員一致でグランプリが決定していたものの、審査委員長の猛烈な反対によって落選した、という逸話が残っています。

理由は「あまりにもやり過ぎ」だから。つまりスプラッターとブラックユーモアの塊なのですよ。一応ストーリーのようなものはありますが、観ているうちにそんなものはもう「どうでもいい」という気分になってきます。いまだかつてこんなヒドイ映画は見たことがありません。

全編に渡って「やるからには徹底的にやってやるぜ!」と言わんばかりの、大タブー大会の連続!しかも壮絶な物量スプラッターだけに止まらず、やわな良識を蹴散らすブラックなギャグのオンパレードは、死霊のはらわたさえも軽々と飛び超えています。

神父がカンフーでゾンビを八つ裂きにするわ、腐ったゾンビ同士がセックスして赤ん坊ゾンビを生むわ、生まれたゾンビの赤ん坊をメチャクチャに虐待するわ、完全に常軌を逸したやりたい放題の展開は、恐怖を通り越してめまいがするほど強烈です。

過去のゾンビ映画を越える斬新なアイデアを思いつく限り片っ端から大量投入し、スプラッター・コメディという枠内で出来る事は全てやり尽くしたという感じでしょうか。

さながら、グロで下品で不謹慎な笑いの見本市のような映画です。しかも恐ろしい事に、クライマックスに突入してからは更なる地獄絵図がてんこ盛り、いや超特大ウルトラゴールデンスーパーデラックスな状態で迫ってくるのですからたまりません!

ナタで、ジューサーで、芝刈り機でバラバラにされまくるゾンビの大群。首や内臓が宙を舞い、床一面が血の海となり、ヌルヌル滑って歩けないという凄まじい有様。80年代のスプラッター・ブーム以降、ホラー映画の出血量は一気に増えましたが、そんな作品が束になっても敵わないほどの壮絶な血糊の大盤振る舞い!

切断された人間の手足は60体分!噴出する血飛沫はプール一杯分!1秒間に20リットルもの血流を撒き散らし、ラストの20分間に至っては、映画は完全に人体破壊工場と成り果てます!総勢50名にもおよぶゾンビとの死闘は画面を真っ赤に染め上げる、まさに空前絶後の大殺戮パーティ!

挙句の果てには巨大ゾンビモンスターまで登場するという大サービスぶりには開いた口が塞がりません。これぞ阿鼻叫喚コメディの終着駅。もうネタは完全に出尽くしました。今後「スプラッター・コメディ」というジャンルで本作を越える映画が出る事は「永久に無い」と断言できます(物理的にはともかく、心理的にはこれが限界点ギリギリでしょう)。

映画の残酷描写は過激になればなるほど現実味を失い、ある一線を越えた時点でギャグになります。ピーター・ジャクソンが目指したものはあくまでも”コメディ”であり、「残酷描写は観客を笑わせる為の”手段”にすぎないんだよ」とインタビューでも答えていました。

それにしてもここまでやるとは…観終わった後は心身ともにクタクタです。まさしく史上最強にして究極のスプラッター・コメディ!もう、面白いとか面白くないとかをコメントできるようなレベルじゃないですよ。しばらく肉が食えません、オエェ!

ニュージーランド出身のピーター・ジャクソンは悪趣味全開の自主映画『バッド・テイスト』で注目を集め、人形惨殺劇『怒りのヒポポタマス』で世界中を震撼させ、本作でついに“次代を担うスプラッター監督”として認められました。

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ピーター・ジャクソンのデビュー作となるSFスプラッタ・ホラー!これも色んな意味でヒドイ映画ですw

そしてなぜか今では傑作ファンタジーロード・オブ・ザ・リングの監督です。いったいどうやったら『ブレインデッド』を経て、総制作費340億円、総スタッフ数2400人の超大作映画『ロード・オブ・ザ・リング』を生み出すことが出来るのか想像もつきませんが、とてつもない監督であることだけは間違いないでしょう。「ただのデブオヤジ」と侮れない、前人未到の出世ぶりです。

しかしいくら出世しようとも、彼の嗜好が変わったわけではありません。現在は『キング・コング』のリメイクを撮影中ですが、最近のインタビューでは「もう一度ゾンビ映画を撮りたい」と語っているそうです。でも、ちょっと難しいでしょうねえ。

たとえば、サム・ライミ監督も『死霊のはらわた』の続編を撮りたがっていましたが、メジャーになり過ぎて「撮らせてくれる人がいない」と嘆いているそうです。

しかしそれは製作会社としては当然の判断であり、多くの観客も、そんなものより『スパイダーマン3』を早く観たいと思っているでしょう。二人とも、もうかつてのB級映画は撮りたくても撮れない状況になっているのです。贅沢な悩みだなあ(^_^;)


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