■あらすじ『昆虫型宇宙生物バグズと人類の死闘が日増しに激化する近未来。最前線で交戦中の地球連邦軍の中隊は、バグズの包囲網に退却を余儀なくされ、付近の前哨基地に立てこもる。基地はバグズの襲撃で荒廃し、救助要請のための通信装置も使用できない。だが基地内を探索していた軍曹が、焼却炉の中に生存者を発見。彼の名はダックス大尉。数々の武勲で知られる英雄だが、無策な上官を戦場で殺害した罪で幽閉されていたのだ。そんな折、バグズが基地を急襲。解放されたダックスは電気バリア装置を再起動し中隊の危機を救うのだが、そこにはバグズたちの恐るべき罠が仕組まれていた!』
本作はポール・バーホーベンが監督した『スターシップ・トゥルーパーズ』の正当な続編である。監督は、前作でおびただしい数のバグズを作り上げたフィル・ティペットだ。彼が作ったCGバグズの数は最大で一画面に2000匹を超え、1フレームの製作に300時間以上かかるほどだったらしい。
だがそんな迫力満点の一作目に比べると、本作はびっくりするほどヴィジュアルがショボい。誰が見ても低予算で作られたという事は一目瞭然だ。いったいどれぐらい安いかといえば、制作費は前作のわずか5%、撮影日数はたったの26日という、驚くほどのスケールダウンなのだ。
なぜこんなに予算が無いのかと言うと、もともと本作はテレビ番組用として製作されたためで、本国では劇場公開されなかったらしい。だから厳密に言えば映画ではないのだが、なぜか日本では劇場公開されたのである(なぜだろう?)。
「そんなに安っぽい映画じゃ、観る価値無いんじゃないの?」と思うかもしれないが、これが結構面白い映画に仕上がっているのだから意外である。もちろんお金が無いので、一作目のような派手な戦闘シーンを期待しても無駄なのは言うまでも無い。
しかし本作のコンセプトは「限定された空間内における人間ドラマ」なのだ。登場人物たちはバグズに追われて老朽化した前哨基地に逃げ込む。そして生き残った仲間たちで救助を待つのだが、実は彼らの中にバグズに寄生された人間が密かに紛れ込んでいたのである!
パラサイト・バグは次々と人間に寄生してコントロールし、兵士たちの皆殺しを企む。誰にも気付かれる事無く、一人また一人とバグズに体を乗っ取られていくという恐ろしい展開は、『遊星からの物体X』と同じで非常にスリリングだ。
前作が“SF戦争アクション”だとすれば、本作は“密室サスペンス・ホラー”と言えるだろう。続編であるにもかかわらず完全にジャンルが変わってしまっているが、これはこれで大変見応えがある。フィル・ティペットの監督初作品としては、上出来と言えるのではないだろうか。
ちなみに、女に寄生したバグズは素っ裸になって男を誘惑して、そいつの体を乗っ取ってしまうのだ。サービスカットも行き届いてます(笑)。