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桃井かおり主演『大怪獣東京に現わる』ネタバレ映画感想

大怪獣東京に現わる
大怪獣東京に現わる

■あらすじ『ある日突然、正体不明の大怪獣が東京に出現し、東京は壊滅的な被害を受ける。そんな時、福井県坂井郡三国町ではニュースを見た人々がパニックに!怪獣被害はさらに広がりついに第二の怪獣まで出現、琵琶湖を舞台に二大怪獣が壮絶な戦いを繰り広げる!そしていよいよ三国町にも怪獣が迫ってきた。三国町民の運命やいかに!福井県限定の爆笑パニック・アドベンチャー!!!』



いや〜、これはとんでもない映画だ。まず『大怪獣東京に現わる』という仰々しいタイトルからして尋常ではない(たぶん1956年の特撮映画『宇宙人東京に現わる』のパロディだと思うが)。

しかも驚くべきことに、ここまでストレートなタイトルを付けておきながら全く怪獣が登場しないのである(いや、マジでw)。

怪獣の姿が直接映るシーンは一度もなく、全てテレビのニュース映像で伝えられ、字幕スーパーや被災者のインタビュー等で「何かとんでもないことが起こっている」という状況を見せるのみ。

さらに怪獣の移動に関しても、天気予報みたいな画面で「え〜、現在、怪獣は北北西に進路を変えて…」などとまるで台風情報のように淡々と説明しているのだから驚きを禁じ得ない。

そして本作のもう一つの特徴が、”東京に現わる”といっておきながら舞台が福井県限定という点であろう。まあ確かに怪獣は東京に現れてはいるんだけど、「それを見て大騒ぎしているはずの東京の人々が全く映らない」という特殊な演出になっているのだ(斬新すぎる!)。

すなわちこの映画は、「”怪獣が現れた!”という臨時ニュースを見てパニックになっている福井県の人々の慌てふためく姿を克明に描いた物語」なのである。いまだかつてこんな怪獣映画があっただろうか?

いや、厳密に言えばこれは怪獣映画ではなく「災害パニックドラマ」だろう。しかも極限状態に追い込まれた人間の姿を、冷めた視点でシニカルに描写したコメディ映画。では、具体的にどういう内容なのか?

福井県三国町に住んでいる普通の主婦:田所夫人(桃井かおり)は、いつものようにTVのワイドショーを見ながらお菓子を食べていた。その時、突然飛び込んできた火災のニュース!まもなく、それは謎の巨大生物の上陸によるものだと判明する。

田所夫人ら奥さん連中は、昔のトイレットペーパー買占め騒動が頭をよぎったか急遽買出しに出動!いつもどおりの挨拶のあと「ちょっと奥さん、怪獣見た?」などと井戸端会議が始まる。

その晩、怪獣が東京 → 八王子 → 山梨と快調に進んでくるので、その先には……福井!?田所さんは「間にどれだけ山があると思ってるんや?そんなもの絶対に来られんワ!」と余裕の構えを見せていたものの、科学者が計算した結果、「怪獣にとって富士山はたかが80mの丘に過ぎない」ということが判明!

さらに今度は九州の福岡県に巨大なカメ型大怪獣が出現した、というニュースが流れて三国町は大騒ぎに!!!この辺から映画のテンションは一気に加速し始める。

白装束に身を包み「裁きの時、ついに来たれり!」と叫ぶ竹内力。異常事態に気が変になり、女子高生を襲って制服を脱がせ、自らそれを着てしまう田口トモロヲ。何もかもあきらめてテレビを見ながら茶をすする本田博太郎

そしてついに大津市で二大怪獣が激突する!と言ってももちろん画面には1秒たりとも怪獣は現れず、激突の衝撃波で薬局の店頭に置いてあるサトちゃん人形が壊れる場面が映るのみ。

そしてTV画面には怪獣を示す”気象マークのようなもの”が激突しているシュールなCG映像が映し出される。巨額の製作費を投じたハリウッド版ゴジラとは似ても似つかぬ激安CGバトルに言葉も出ない。

挙句の果てには、北朝鮮が間違えて三国町にミサイルをぶち込むというとんでもない展開に突入!もはや確実に正気ではない。凄すぎる!!!

この常軌を逸した映画を撮ったのは『恐怖!寄生虫館の三姉妹』という狂ったオリジナルビデオを撮った宮坂武志。そして脚本を書いたのは三池崇史監督作品でお馴染みのNAKA雅MURAである(言われてみれば三池作品っぽいような…)。

それにしても(姿は全く映らないが)「口から放射能を吐き、二足歩行する巨大なトカゲのような生物」ってどう考えてもゴジラだし、「回転しながら空を飛ぶ巨大なカメのような生物」はどう考えてもガメラだろう。

つまり本作は、決して実現することのない”二大怪獣の初対決”という記念すべき(?)映画なのだ。ある意味、『エイリアンVSプレデター』にも匹敵する夢の大激突と言えるかもしれない。そういう意味では、怪獣映画ファン必見の作品なのではないだろうか(怪獣の姿は一瞬たりとも見えないけれどw)。