■あらすじ『ベルリンで運び屋をしているマニは、自分の不注意から10万マルクが入ったバッグを失くしてしまった。途方に暮れるマニは恋人のローラに助けを求める。ボスがやってくる前に金を用意出来なければ殺されてしまう。残された時間はたったの20分!恋人の命を救う為、ローラはひたすら走り続ける!』
※ネタバレあり
この『ラン・ローラ・ラン』は、とてつもなくシンプルな話で、「彼女が金を手に入れて彼の所へ届ける20分の物語」なのだ。その間、ローラは走りっぱなしであり、まさにタイトル通りの内容である(現実には20分以内に10万マルクを工面して待ち合わせ場所へ行くことは、不可能に近いと思うが)。
しかし一つのシチュエーションだけで映画を一本作ってしまう発想が凄い。そして、素早い場面展開とバックに流れるジャーマン・テクノとの相乗効果によって、猛烈な疾走感を感じさせる映画になっている。
この映画の最大の特徴は「同じ時間軸を何度も繰り返す」ことである。彼女が彼からの電話を受けたところから物語が始まり、彼の元へ辿り着いたところで物語は終わるんだけど、これだけではリアルタイムだと20分で終わってしまうし、途中で引き伸ばしたとしても映画としては短過ぎる。
そこでなんと「彼の元へ辿り着いた」ところで一旦リセットがかかり、再び「彼からの電話を受ける」シーンから物語が再スタートするのだ!と言っても全く同じ状況が繰り返されるのではなく、少しずつ色々な場面で変化が生じ、その影響を受けて最終的な「結末」が変わってしまうという展開。これにはビックリ!
しかもさらにもう一度リセットが行われ、彼女は合計三回「同じ時間軸を繰り返す」ことになるのだ。非常に珍しい映画であり、ある意味アドベンチャーゲームに近いかもしれない。バッドエンディングで終わってしまってもリセットして、セーブしたところからもう一度やり直すという感覚と全く同じだ。
しかし人生はゲームのようにリセットは効かない。まさに誰もが思う「あの時こうしていたら…」という感情を具現化したような映画である。
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