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トニー・ジャー主演『マッハ!!!!!!!!』映画感想

マッハ!!!!!!!!

出演:トニー・ジャー、ペットターイ・ウォンカムラオ、プマワーリー・ヨートガモン 監督:プラッチャヤー・ピンゲーオ

■あらすじ『タイの田舎、ノンプラドゥ村の寺院から仏像が盗まれるという事件が起きた。そこで寺院で育てられたティンが仏像を取り戻す為に町へと旅立った。襲い来る強敵どもを倒し、無事に仏像を取り戻す事が出来るか!?CG、ワイヤー、スタント、早回し一切無し!これが純度100%のムエタイ・アクションだ!』



この『マッハ!』を一言で言い表すならば「痛い映画」である。とにかく、思わず「ウッ!」と顔をしかめるような危険極まりないアクションが満載なのだ。特筆すべきは主演のトニー・ジャーで、その炊飯器のような名前とは裏腹に、信じられないアクションを連発する。

彼は、8歳の頃ジャッキー・チェンの映画を見て感激し、朝から晩まで練習してカンフーの型を全て覚えたという筋金入りの「アクション・バカ」だ。そんなアクション・バカが全身全霊を掛けて作り上げたこの映画の最大の特徴は、CGやワイヤーを一切使わない「本物のアクション」を見せるということ。

思い起こせばCGやワイヤーを多用した「デジタル・アクション」とでも呼ぶべきド派手なアクション映画は、「マトリックス」の大ヒットと共にあっという間に映画業界を席巻し、すっかりハリウッドのスタンダードになってしまった感がある。

それどころかジャッキー・チェンでさえ、最近はCGやワイヤーに頼っているという寂しい状態だ。しかしそんなデジタルだらけの近年のアクション映画に、『マッハ!』は正面から挑戦状を叩き付けたのである(決してお金が無いからではない)。

高い木の上からダイレクトに地面に落下したり、車体の下数センチの隙間をくぐり抜けたり、頭部に本気で蹴りを入れたりといった我が目を疑う驚愕スタントの数々に開いた口が塞がらない。

中でも圧巻は「足に火を付けたままハイキックするシーン」だろう。なんと、自らの足にガソリンをかけて本当に火を付けているのだ!ここまで来るとアクション・バカというよりただのバカである。

さぞや現場ではケガ人続出で、ひょっとしたら何人か死んでるんじゃないか?とさえ思ってしまうが、実際はそうではなかったようだ。かなり厳重に安全対策が施されており、意外にもトニーの一番大きなケガは「着地に失敗して足をひねったこと」だけらしい。

服の下にはしっかりプロテクターを装着し、床には柔らかい材質のものを使用して衝撃を吸収させている。地面に直接落下しているように見えるシーンでも、事前に穴を掘ってダンボール箱を埋め、その上から土をかけているのだ。

また頭部を蹴ったり殴ったりする危険なシーンでは、俳優がヘルメットを被り、その上からカツラを被って撮影しているのである(よく見ると明らかに髪形が不自然な人がいるので一目で分かる)。安全面にはかなり気を使っているらしい。

こうしてみるとジャッキー映画の撮影の激しさは、やはり際立っていると言わざるを得ない。なんせ毎回ケガ人続出で(というか一番ケガしているのはジャッキーなんだが)、骨折などはケガに含まれないというぐらいの凄まじさだったので。

「サンダーアーム」の頃から新作が公開されるたびに毎回「これが最後のジャッキー映画になるかもしれない」と思いながら見ていたほどで、そういう意味でも「やっぱりジャッキーってすげえよなあ」と改めて驚愕(単に安全管理がアバウトだっただけか?)。

ちなみに、『マッハ!』のもう一つのポイントは「驚くほどストーリーが単純」だという事だ。物語は「主人公が盗まれた仏像を取り戻す」、たったこれだけ。近年稀に見るシンプルさであり、まさに「アクションを見せる為だけに作られた映画」映画と言えるだろう。そのいさぎよい姿勢には拍手を送りたい。

言うまでも無く『マッハ!』はムエタイを最大限にアピールする為に作られたものだ。しかし実際にはムエタイが凄いというよりも、「トニー・ジャーの身体能力がズバ抜けている」としか言いようの無い映画に仕上がっている。果たして彼は新世代を代表するアクション・スターになれるのか?というわけで、今後の活躍に注目したい(ただ、もう少し演技を勉強した方がいいぞ)。