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映画『オールド・ボーイ』ネタバレ感想

オールド・ボーイ

■あらすじ『平凡なサラリーマン「オ・デス」はある日突然何者かに誘拐され、なんと15年間も監禁され続けた挙句突如解放される。一体誰が、なぜこんな事をしたのか!?彼は謎を解き明かす為に行動を開始する。だがそこには、想像を絶する恐るべき策略がめぐらされていたのだった!』

主演:チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・ヘジョン、監督:パク・チャヌク、原作:土屋ガロン嶺岸信明


第57回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、クエンティン・タランティーノも大絶賛したという「衝撃の問題作」を見てきた。何が「衝撃」で「問題」なのかは後で述べるとして、まずは感想から。一言で言えば非常に「面白い」映画である。

面白いと言う意味には「良く出来ている」という事以外にも「変わっている」という意味も含まれている(もしくは「ユニーク」と言うべきか)。この映画はどちらかと言えば後者で、良い悪いは別にして「強烈なインパクト」を感じる。

ストーリーから推測するとガチガチのサスペンス映画のように思いがちだが、そうではない。以下、その面白さを具体的に検証してみた。


●主人公のキャラクターが面白い
15年間の監禁生活から解放された男は若者からタバコを取り上げ、怒って向かって来た若者をボコボコにしてしまう。その後寿司屋に入って生きているタコに喰らい付き、そのまま気絶。そして自分が監禁されていた場所を探すために、ギョーザの食べ歩きを始めるのだ。

何故なら監禁中の食事は全て出前の中華だったので、店を特定出来れば監禁場所も分かるはず、と考えたからだ。すごい発想!この男のワケの分からないバイタリティーが、そのまま映画の勢いに直結しているような気がする。

●ヴィジュアルが面白い
男はある少女と知り合い、監禁中にどれほど孤独を感じたか説明する。少女は「孤独な人はアリが見えるのよ」と意味不明な事を発言。すると突然電車が出現、中には少女が一人で座っている。ふと横を見ると巨大なアリが!人間とほぼ同じ大きさの「でかいアリ」が、普通に電車の座席に座っているのである。

これはもちろん少女の心象心理を映像化したものであるが、このテの映画には珍しい表現方法だ。また男が金槌で人を殴ろうとすると、いきなり視線が「点線」になって画面上に現れたり、アニメのような非常に変わった効果を多用している。ただし、後半はこのような面白い効果はあまり出てこない。

●ストーリーが面白い
この映画の面白さの中心とは、「誰が、何の目的で15年も監禁したのか?」という「謎解きの面白さ」である。すなわち観客の興味は、その「答え」が何なのか、という一点のみに集中しており主人公が少ない手がかりを手繰り寄せ、徐々に真相に迫ってゆく過程こそが最もドキドキする瞬間なのだ。

そういう意味においてこの映画は「引き」が猛烈に上手い。次から次へと意外な展開を見せ付けられて「次は一体どうなるの!?」と画面から目が離せないのである。「エンターテイメント的面白さ」は群を抜いている、と言っていいだろう。

ただしグロいシーンが頻繁に出てくるし、後味が悪い映画なので「爽快感」を求める人にはあまりオススメできない。しかし原作のコミックは日本製だが、「決して日本では作れない映画」であることだけは間違いない。


※以下ネタバレしてます!


では、いよいよ核心部分についての感想を述べてみる。まず犯人は誰か?という点については実は意外と早く明らかになる。「ゲームのルール」などの指示を受けるからで、これは特に重要ではない。

問題は「なぜ?」の部分である。犯行の理由というか「動機」が明らかになるシーンで、正直失望してしまったのだ。

主人公の心理状態を想像すると「え〜!?そんな理由で俺を15年も監禁したのかよ!?」という感じだろう。犯人にとっては大問題かもしれないが、はっきり言って人間一人を15年間も監禁する理由になるとは到底思えないのだ。

しかも主人公にとっては直接関わりの無い事件であり、理不尽極まりない話である。さらに最大の問題はこの理由がほぼ「予想の範囲内」だったという事だ。

大抵の観客は「こんなに酷い事をするからには、主人公によほど強い恨みを抱いているに違いない」と考えるだろう。そうなるとある程度動機は想像出来る上に、まさに予想通りの内容だったという。これには正直ガッカリである。

さんざん引っ張っておいて結局コレか!?

ぶっちゃけ「金田一少年の事件簿」に出てくる犯人の動機と大差ないレベルだ。確かに「理不尽な動機で人生を狂わされる主人公」という点においては納得できなくもないんだけど、せっかく面白い話で盛り上げてきたのに、最後の最後でつまずいたような印象でもったいない。せめてもう一ひねりあったらなあ〜。

実はこの後にもう一つ犯人が仕掛けた「復讐」が判明するのだが、動機に納得できないので「なぜそこまでする必要があるんだ!?」という感じしかしない(復讐の方法は人間のタブーに大胆に踏み込んだものであり、15年という長さにもちゃんと理由があったのだと判明し、確かに「衝撃的」ではあるが)。

これは「あまりにも前フリが長くて面白すぎると観客の期待も異常に膨らみ、想像を超える結末を提示する事は極めて困難になる」という当たり前の事例の証明でもあると思う。まあ動機の「ありきたりさ」を差し引いても十分面白い映画には違いないんだけど。