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塚本晋也監督『6月の蛇』映画感想

6月の蛇

『6月の蛇』を見た(主演:黒沢あすか神足裕司、監督:塚本晋也)。

一言で言えば暗い映画である。初めから終わりまで雨が降り続いており、常にけだるい音楽が流れ、しかも画面は全編ブルーなのだ。まことに「鬱陶しい映画」というのが第一印象である。

ストーリーとしては、ある主婦がストーカー男に秘密をにぎられ、男から様々な事を強要されるうちにやがて…という風にサスペンス仕立てで引き込まれやすくなっている。

登場人物も、主要なキャラは「夫」「妻」「ストーカー」と3人しかおらず、単純明快で分かりやすい。見所はやはり、「ストーカー」の要求をいやいやながらも聞いていた「妻」が次第に自分の中に潜む本性に気付いていくエロシーンであろう。

この映画で訴えているのは「エロ」と「愛」なのである。逆に欠点(といえるかどうか微妙だが)は、唐突に挿入される「現実なのか虚構なのか」分からないシーンだ。

物語の後半に、いきなり「夫」が変な仮面のようなものを付けられ、水の入った水槽のようなものの中でもがく男女を見せられている、という訳の分からないシーンが出てくる。物語の流れで考えれば明らかに「虚構」なのだが、それまでがずっと「現実」だったので面食らう人もいるはずだ。

僕はここで初めて「あ、そういえばコレ塚本晋也の映画だったんだ」という事を思い出したのである。なんせ「鉄男」のイメージが強すぎたので、それから比べると本作はあまりにも「普通」の映画なのですっかり忘れて見ていたのだ。

個人的にはあのシーンは特に必要無いんじゃないか、と思う。「鉄男」とはあまりにも映画の方向性が違うので、この映画の世界観には合わないような気がするし(塚本ファンは喜ぶかもしれないが)。