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妻夫木聡 池脇千鶴『ジョゼと虎と魚たち』ネタバレ感想

ジョゼと虎と魚たち

本日、犬童一心監督『ジョゼと虎と魚たち』のDVDを購入。劇場で見たのだが、良かったので思わず購入してしまった。だがこの映画、どのように評価したらよいのか正直困ってしまうのだ。僕の中では唯一、見終わってしばらくしてから評価が変わった映画なのである。

最初、劇場で見た時の印象はあまり良くなかった。はっきり言って腹が立ったのだ。その理由は、妻夫木聡演じる主人公の行動に共感する事が出来なかったからだ。

映画のストーリーを追っていくと彼の行動は、「本能の赴くままに気に入った女の子にちょっかいを出しまくり、ジョゼ(池脇千鶴)と付き合うようになりSEXするものの、様々な重圧に耐えかねて最終的には別れてしまい、結局前の彼女とよりを戻す」という物語である。

表面だけ見ると、軽薄で身勝手でどうしようもない男にしか見えないだろう。身体障害者の女性と付き合っておきながら、あっさり捨てて前の女の所へ戻るなどという自己中心的な行動に共感など出来るか!?と怒りがこみ上げてきたほどだ。

だが、見終わった後何かが気になるのである。その理由が良く分からない。あんまり気になったのでもう一度観に行った。そうしたら分かったのだ。「ああ、これは普通の恋愛映画なんだ」と。

普通このような”身体障害者”という要素を持った人物を物語の中心に配置した場合、「悲恋の物語」としてドラマチックに盛り上げようとする事が多いんだけど、この映画は違う。「脚が悪い」という設定は、あくまでもジョゼというキャラクターを表現する為の「個性」の一部にすぎないのだ。

決して「主人公と身体障害者の可哀そうな物語」ではない。「普通の大学生と普通の(脚が悪い)女性の物語」なのである。身体障害者だからといって必要以上に美化することなく、あくまでも自然に淡々と2人の恋愛の過程を描いているのだ。

したがってそこに描かれている出会いと別れは、どこにでもあるような極めて”日常的な描写”であり、決して特別な恋愛などではない。「リアルな恋愛」ともちょっと違うような気がする。強いて言えばリアルとファンタジーの狭間にあるような…そんな不思議な恋愛映画なのだろう。オススメ。