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ジャッキー・チェン自伝『永遠の少年』を読んでみた


先日、ジャッキー・チェン自伝『永遠の少年』」という本を読みました。ジャッキー・チェンの自伝本自体は昔から何冊も出てるんですけど、この本は最近発売されたので情報が新しく、ページ数も600ページ近くあって、載っているデータの量がハンパなく多いのが特徴です。

生まれた時の状況から始まり、サモ・ハン・キンポーやユン・ピョウたちとの出会い、苦しいスタントマン時代を経て『スネーキーモンキー 蛇拳』、『ドランクモンキー 酔拳』の大ヒットでトップスターの仲間入りを果たした頃の話など、現在に至るまでのジャッキー・チェンのエピソードを実に詳しくまとめてあるので、ファンの満足度も高いんじゃないでしょうか。

ちなみに、ジャッキー・チェンといえば危険なスタントを自ら演じていることでも有名ですけど、2007年頃にスタントマンのブルース・ロウが「ジャッキーはスタントマンを使っている」と暴露し、話題になったことがありました(ブルース・ロウはチョウ・ユンファアンディ・ラウなどのスタントも演じている)。

この時、「え〜?ジャッキーって自分で全部のアクションをやってるんじゃなかったのかよ〜」とガッカリした人もいたようですが、実はジャッキー本人は以前からスタントマンの存在を公言していて、ファンにとっては周知の事実だったのですよ。

もちろん、危険なアクションをジャッキー自身が演じていることに偽りはありません。ただ、ジャッキーにも得意なアクションと苦手なアクションがあるらしく、「このシーンでは綺麗なハイキックを撮りたいから、俺よりもあいつの方が適任だろう」みたいな感じで、状況によっては「そのアクションを最も上手くこなせる人」に任せているんだとか。

有名な例で言うと、『サイクロンZ』でジャッキーとベニー・ユキーデが戦うシーン。ラストに回転蹴りでユキーデをキックしている人は、どう見てもジャッキーではありません(スローではっきり映っているので丸わかりw)。この人はチン・ガーロウというスタントマンで、回転系の技を得意にしていることから、このシーンに抜擢されたそうです(ちなみに蹴られている人もユキーデではない)。

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それから、日本が舞台の『デッド・ヒート』が公開された時も、「ジャッキーよりスタントマンの方が多く映ってるぞ!」とファンの間で話題になるぐらい、スタントマンの姿が目立っていました。この映画の監督はゴードン・チャンですが、パチンコ屋のアクションシーンは時間の都合でサモ・ハン・キンポーが撮っていたため、洪家班(サホ・ハンのスタントチーム)のスタントマンが多数登場することになったらしい。他にも「あれ?良く見たらジャッキーじゃないぞ?」とバレバレな場面はいくつもあり、多くの映画で代役を使っていることは事実でしょう。ジャッキー本人も悪びれることなく、この自伝本の中で堂々と「実は時々、ロングショットでスタントマンを使っているんだ。それがバレたとしても、まあこの歳なんだから、ファンの人たちも許してくれるよね」と語っています(どうやら隠すつもりは無いらしいw)。

ただ、ジャッキー映画のスタントマンと、ハリウッド映画のスタントマンは、その”役割”が大きく異なってるんじゃないかなと。例えば、トム・クルーズのスタントマンは「主役のトム・クルーズが怪我をしないように、危険なアクションを代わりに演じる」ことが目的なのに対し、ジャッキーの場合は自分の身を守ることなど考えていません。

それよりも、蹴りや突きのモーションを画面で見た時に、「どちらの動きがカッコ良く見えるか?」、その判断基準に従ってスタントを使うか使わないか決めているそうです。『サイクロンZ』の場合も、スタントマンのキックの方がジャッキーよりもカッコ良かったので採用したとか。つまり、アクション全体のクオリティをより高いレベルへ引き上げるために、スタントマンを使っているのですよ。

基本的に、「ジャッキーが不得意なシーン」や「顔がよく見えないシーン」などはスタントマンにやってもらい、「危険だけど目立つシーン」はジャッキーがほとんど自分でやっているとのこと。それどころか、場合によっては「他の役者のスタントもジャッキーがやってしまうパターン」すらあるらしい。いや〜、凄いっす(^_^;)

その他、作品毎に気になったエピソードをいくつかご紹介。


●『プロジェクトA

超有名な『プロジェクトA』の「時計台からの落下スタント」は、今でも映画ファンの間で語り草になるほど凄まじいインパクトを残しました。あの時計台はオープンセットで、街の駐車場に数カ月かけて建てられたそうです。

ところが、撮影の準備を終えてから実際にジャッキーが飛び降りるまで、なんと7日間もかかったらしい。原因はジャッキーがビビッたからで、いざ頂上に立って下を見下ろすと、あまりの高さに「ダメだ!今日は調子が良くない!」と撮影を止めてしまい、これを何日も繰り返したという。

そして7日目、ついにしびれを切らしたサモ・ハン・キンポーが「いつまで待たせるんだ!」とジャッキーに怒鳴り、怒ったジャッキーが「だったらお前が撮れよ!」と逆切れ。売り言葉に買い言葉で「やってやらあ!」とサモ・ハンがカメラを回すことになり、急遽アクションシーンの撮影がスタート。

しかし、時計台の針にしがみついたジャッキーは、やっぱり怖くて手を離すことができません。やがて徐々に手に力が入らなくなり、「もうダメだ」と思った瞬間に体が落下!二枚のサンシェードを破って地面に叩き付けられました(あのシーンの表情は演技ではなく、「本気で苦悶していた」とのこと)。

なお、映画では本編で2パターン、エンディングのNG集で1パターン、合計3つの異なる落下テイクが使用されています。つまり、ジャッキーは全部で3回も飛び降りたことになるわけで、当時の宣伝等でも「3回も飛んでる!ジャッキー凄い!」と言われてたんですが、「実は1回しか飛んでない」という説があるのですよ。

これは、当時の成家班(ジャッキーのスタントチーム)に所属していたマースとダニー・チョウが「ジャッキーの代わりに自分たちが飛び降りた」と証言しているからで、実際に複数のスタントマンが時計台から落ちているそうです。なので、映画のあのシーンは一部ファンの間で「ジャッキーじゃなくてスタントマンでは?」と言われていたらしい。

ところが、この自伝本の中ではジャッキーが「2回飛んだ」と言ってるんですよ。1回目のテイクで首にダメージを負い、2回目のテイクで目の前が真っ白になったが、「ユン・ピョウに助け起こされながら何とかやり遂げた」と。ここで重要なのは「3回飛んだ」とは言ってないところなんですね(笑)。

つまり、本編に使用された2回の落下テイクがジャッキー本人で、残りの1回がマース(あるいはダニー・チョウ)なのではないか?と。まあ、映画を制作した側としては、「3回とも全部ジャッキーがやった」ということにしておいた方が都合がいいと思うんですけど、正直に「2回しか飛んでないよ」と言ってしまうところがジャッキーらしくていいですねえ(^_^)


●『ポリス・ストーリー/香港国際警察

「高さ30メートルのポールを一気に滑り落ちるスタント」は、数あるジャッキー・チェンのアクションの中でも、いまだに伝説級のインパクトを誇っている超絶スタントです。しかも、『プロジェクトA』の「時計台落下スタント」は屋外のセットだったため、ジャッキーの決心がつくまで1週間も待つことができましたが、『ポリス・ストーリー』のショッピングモールは実在する建物。なので営業時間外のわずかなタイミングで、撮影を完了しなければなりません。

そのため、スタッフの準備ができたらすぐに所定の位置にスタンバイし、すぐに飛び降りる、という非常に慌ただしい段取りだったそうです。しかも、現場には15台のカメラを用意し、様々なアングルからこのスタントを撮ろうと待ち構えていました。中にはハイスピードカメラも入っていたので、少しでも飛び降りるタイミングが遅ければ、フィルムが足りなくなります。

つまり、一旦上に登ったら躊躇なく飛び降りるしかないという、まさに恐怖の本番一発勝負!いかにジャッキー・チェンといえども緊張感はハンパじゃありません。そこでジャッキーは覚悟を決めるまでの時間を稼ぐため、「俺が首を振ったら、それが合図だからカメラを回してくれ」とスタッフに伝え、所定の位置に立ちました。

下を見ると凄い高さで、「うわ〜、怖えなあ…」とビビるジャッキー。するとその時、無意識に首を動かしてしまったらしく、なんと下で15台のカメラが一斉に回り出したのです!「ちょっと待て!まだ心の準備ができてないよ!」と言いたかったが、もう遅い。飛び降りるしかない!この瞬間、ジャッキーは「ヤバい。俺、死ぬかも…」と思ったそうです。

映画でこの場面を観ると、ジャッキーは何かを叫んでポールに飛び移り、電球を破壊しながら30メートルを一気に滑り降りていますが、広東語で「死ね!(シアー!)」と叫んでいたそうです(「死んだら死んでもいいさ」 → 「いっそ死んでやる!」という心境だったらしい)。

終わった時は全身怪我だらけで、両手の皮膚も完全にめくれていたとのこと。何とも凄まじいスタントですねー。しかもこの直後、ボロボロになった体のまま、当時サモ・ハン・キンポーが監督していた『ファースト・ミッション』の現場へ移動して撮影をこなしたというのだから凄すぎる!どんだけ体力あるんだよ(^_^;)


●『サンダーアーム/龍兄虎弟』

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ユーゴスラビアで撮影していた時、飛び付いた木の枝が折れて頭部を岩に強打。ジャッキー・チェンは頭蓋骨骨折の重傷を負ってしまいました。すぐにでも手術をしなければ危険な状態ですが、その地域には脳外科医がいません。飛行機で移動しようにも、「脳が機内の圧力に耐えられない」と医者に止められる有様。

スタッフが大騒ぎしている間もジャッキーの耳や鼻からどんどん血が流れ出ています。まさに絶体絶命の大ピンチ!やがてジャッキーは意識を失い、不思議な体験をしたそうです。もう一人の自分が現れ、ゆっくりと歩いていくのが見えたと。その先には光の束があり、光に向かって自分自身が行こうとしている。

すると、別の自分が大声で「行くな!行くんじゃねえぞ!」と叫んでいるのが聞こえたらしい。やがて目覚めると病院のベッドの上で、すぐ側ではアラン・タムが口笛で『サンダーアーム/龍兄虎弟』の挿入歌を吹いていたという。なんと、たまたまユーゴスラビアを訪れていた脳外科医に緊急手術を依頼、無事に成功したのだそうです。これってもしかして臨死体験?危ねえええ!ギリギリじゃん(゚ロ゚;)ヒエェッ!!


●『シャンハイ・ナイト

スタッフたちと『シャンハイ・ナイト』の企画を話し合っていた時、ジャッキーはフェイ・ウォンを出演させようと考えていました。フェイ・ウォンは中国人の歌手で、ジャッキーは彼女の歌を気に入っていたようです。そこで助監督に「今、中国ではフェイ・ウォンが大人気だ。ぜひ『シャンハイ・ナイト』に出てもらおう」と言いました。「はい、すぐに連絡を取ってみます」と返事する助監督。

しばらくして「フェイ・ウォンと連絡が取れました。こちらに来てくれるそうです」と言われたジャッキーは大喜び。「やった!フェイ・ウォンと共演できるぞ!」と待っていたものの、やって来たのは全然知らない女性でした。「私をご指名してくださって、本当にありがとうございます!」と言われたジャッキーは「あ〜、うん…」と答えるしかありません。

すぐに助監督を捕まえて、「おい!あれはフェイ・ウォンじゃないぞ!」と問い詰めるジャッキー。どうやらスタッフが勘違いしていたらしく、連れて来たのはシンガポールの女優のファン・ウォンだったのです。しかし今さら「間違えました」と言うわけにもいかず、結局そのままファン・ウォンがキャスティングされることに…。もちろん、この件についてファン・ウォンは何も知らないそうです(ヒドい話だw)。


●息子のジェイシー・チャン

最後に子供のエピソードを。ジャッキー・チェンは若い頃から仕事で忙しく、息子のジェイシー・チャンが生まれてからもなかなか会えませんでした。しかしジェイシーが小学生の頃、「お父さんは放課後に迎えに来たことが一度もない」と言われたことをずっと気にしていたようです。それからしばらく経って、ようやく時間が出来たジャッキーは、「よし!息子を迎えに行こう!」と小学校の前で待つことに。ところが、いつまで待ってもジェイシーは出て来ません。「おかしいな」と思って確認すると、息子はとっくの昔に中学生になっていたそうです。ジャッキー…(-_-;)

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