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どうしてこうなった?映画『サボタージュ』ネタバレ感想/解説/考察

■あらすじ『DEA(麻薬取締局)のジョン・ウォートン(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、”破壊者”の異名で恐れられる伝説の捜査官である。彼が率いる特殊部隊は恐れ知らずのタフな部下8人で構成された最強チームだ。ある日、彼らは麻薬カルテルのアジトを襲撃し、闇資金から1000万ドルの大金を奪うという計画を実行。ところが、なぜか隠したはずの1000万ドルが忽然と消えてしまう。その後、メンバーを標的とした連続猟奇殺人事件が発生、一人また一人と不可解な死を遂げていく。アトランタ市警のキャロライン刑事と協力して事件の真相解明に乗り出すジョンだったが、衝撃の真相が明らかに…!』



アーノルド・シュワルツェネッガー主演のサボタージュをようやく鑑賞。本作はアガサ・クリスティの長編推理小説そして誰もいなくなったを原作としているのだが、非常に不可解な点が多い映画なんだよね。

ちなみに『そして誰もいなくなった』は、「孤島に集められた10人の男女が一人ずつ殺され、最後は全員死亡。果たして犯人は誰なのか?」という内容の本格ミステリーである。

世界的にも有名なこの推理小説を、アーノルド・シュワルツェネッガー主演でアクション映画に変換するとは、いったいどんな仕上がりになるんだろう?と思ったら、筋肉隆々のシュワちゃんイカつい荒くれ男たち(一人は女性)を部下に引き連れ、情け容赦なく銃をブッ放し、ひたすら犯罪者をブッ殺していくという、単なるバイオレンス・アクション・ムービーだった(まぁ”シュワちゃんらしい”といえばらしいけどw)。

暴力描写は激しいものの、『そして誰もいなくなった』的な要素はほとんど見当たらず、これを”ミステリー”と呼ぶのは「ちょっと厳しい」と言わざるを得ない。さらに、事件の謎解き自体もかなり粗雑で、「なるほど!真犯人はあいつだったのか!」みたいなカタルシスも得られなかったのが残念(わざわざアガサ・クリスティの小説を原作にする必要があったのだろうか?)。

なお、キャスティングに目を向けると、主演のアーノルド・シュワルツェネッガーの部下としてサム・ワーシントンを配置しているあたりが「新旧ターミネーター対決」という感じで面白かった。しかし、そんな重要な役を高田延彦が日本語吹替えしているのは「どうなんだろう?」と思ったり(ちなみに三四郎の小宮も参加している)。

基本的に男が多い映画なんだけど、事件を捜査する女刑事役を演じたオリヴィア・ウィリアムズが割といい感じだった。短い髪型で男勝りの行動をとりまくる姿のなんたるカッコ良さ!途中でいきなりシュワちゃんと一夜を共にする展開はさすがに唐突すぎて笑ったが(笑)、総じて魅力的なキャラクターと言えるだろう。

※以下、ネタバレしてます。

結局、最後に「金を奪ったのはシュワちゃんだった」という真相が明らかにされ、「仲間たちを殺していたのはリジーとシュガー」ということで決着するんだけど、なんかスッキリしないんだよね。リジーは死ぬ間際に「1000万ドルを盗んだから殺した」と言っているが、普通は盗まれた金を取り戻そうとするんじゃないの?

仮に「仲間たちの誰かが盗んだに違いない」と考えたとしても、殺して恨みを晴らすより「分け前をよこせ!」と脅した方が得になるはずだし、「誰が盗んだか分からないから全員殺す」って、行動がムチャクチャすぎるでしょ(苦笑)。リジーは麻薬でラリってまともな判断ができなかったとしても、共犯者のシュガーはそれぐらい分かるのでは?つまりこの映画、殺しの動機が恐ろしく不自然なんだよね。

また、仮にリジーとシュガーが犯人だったとすると、殺人の段取りが不鮮明すぎる。ストーリー上ではまずパイロが殺され、次にネック、続いてトライポッドという順番だが、実際の時系列では最初に殺されたのはトライポッドなのだ。しかも、”カイビル”というプロの殺人集団に襲撃され、抵抗した末に殺されている。

ジーとシュガーはこの後に”カイビル”を倒して死体を海に沈めてるんだけど、いつ、どのタイミングで彼らを殺したのか?そして、たまたま最初にトライポッドが殺されたことをきっかけにして「仲間を皆殺しにしよう」と思い立っただけなのか?「カイビルの犯行に見せかける」という小細工は仕掛けているくせに、計画性があるのか無いのか、その辺がはっきりしないんだよねぇ。

実は、この映画の結末にはもう一つ解釈があって、シュワちゃんが殺したのでは?」と考えている人もいるらしい。つまり、トライポッドがカイビルに殺された後、彼らの犯行に見せかけてパイロとネックをジョン・ウォートン(シュワ)が殺した、というのだ。

しかし、よく考えたらこの説にも無理がある。ジョン一人でネックのような大男の死体を天井に釘付けにできるのか?とか、少なくともモンスターとグラインダーを殺したのは間違いなくリジーなので、ジョンの計画がどこまで関連しているのか良く分からない等(単なる偶然?)。最大の問題は「自分の部下たちを皆殺しにする動機が見当たらない」という点だろう。

もし動機があるとすれば、「奪った1000万ドルを皆で山分けする」と言って仲間に協力させた手前、自分が一人占めしたことがバレるのはマズいからとか、それぐらいしか思いつかない。だが、そんなことで大切な部下を皆殺しにするなら、最初から「妻のかたきを討ちたいんだ。協力してくれ!」と言えば助けてくれたんじゃないだろうか?やっぱり無理があるよなあ。

一つ気になったのは、隠した金を回収するために下水道へ入った時、ライフルの弾を見つける場面だ。結局、この弾を置いたのはジョンだったわけだが、いったい何のために置いたのか?見つけたリジーによると「金を探すなっていう警告ね」とのことで、もしそうならジョンは他の仲間を巻き込みたくなかったのではないだろうか?

そのためにライフルの弾を置いて警告し、「金が!金が!」と騒ぐ奴らに「もう忘れろ」と何度も忠告しているし。つまり、「妻子を殺した連中に対する報復はあくまでも自分一人で実行したい」と考え、だからこそ仲間たちに助けを求めなかったのだろう(真相を打ち明けると「俺たちも一緒にメキシコへ行くぜ!」と言い出しかねないから)。

ジョンのキャラクターを考えると、このように解釈した方がしっくりくるが、だとすれば彼の心情はまさに「痛恨の極み」だったに違いない。なぜなら自分が1000万ドルを隠したせいで、仲間たちの間に疑心暗鬼が生まれ、結果的に全員死亡させてしまったのだから(そう考えると切ない話かもしれないなぁ)。


しかし、どうして本作はこんなにモヤモヤする展開になってしまったのだろう?と気になって調べたら、どうやら最初に作られたバージョンはもっとミステリー色が強く、途中に様々な伏線が散りばめられ、真犯人の動機も全然違うものだったらしい。当初のシナリオではシュワちゃんが連続殺人の犯人で、最後に女刑事を撃ち殺してエンド…というオチだったようだ。

ところが、尺の長さが3時間近くにもなったため、プロデューサーから「もっと短くしろ!」と言われた監督が不本意ながらも色んな場面をカットしまくり、さらに「オチが暗すぎる!」との理由で撮影済みだったラストシーンも全面的に撮り直したらしい。その結果、当初とは全く異なるストーリーに成り果て、最終的にはなんと109分の映画になってしまったのである(カットしすぎだろw)。

つまり完成したバージョンは、重要なシーンが大幅にカットされた挙句、ドラマの結末さえも改変を余儀なくされ、「シュワちゃんが真犯人だった」という元の設定の痕跡だけが中途半端に残ったせいで、物語の辻褄が全く合わなくなっているのだ。う〜ん…なんというか……酷い話だなあ(-_-;)

というわけで、事件の真犯人がリジー&シュガーでも、あるいはジョン・ウォートンでも、どちらにしても釈然としない終わり方で、残尿感が漂いまくる映画になってしまったのは「残念」としか言いようがない。銃撃シーンやカーチェイスなど、アクション的な見どころがたっぷりあるので退屈はしないんだけどねえ。もったいない!


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