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『TIME/タイム』映画感想(ネタバレあり)


■あらすじ『老化を克服した近未来の社会。全ての人間の成長は25歳でストップし、以降の余命は体内時計が刻む残り時間によって設定されていた。富める者は永遠の命を享受する一方、貧しき者は早死にする残酷な世界。ある日、貧しい青年ウィルは、社会への不合理を目の当たりにして、システムを支配する見えざる敵に立ち向かう決意をする。そして富裕層が暮らす地区へと潜入したウィルは、大富豪の娘シルビアと出会うのだが…。「ガタカ」のアンドリュー・ニコル監督が、人間の余命が通貨のように売買される近未来を舞台に、貧しい青年と大富豪の娘が繰り広げる逃避行の行方を描くSFサスペンス・アクション!』


本日、WOWOWシネマにてSF映画『TIME/タイム』が放映されます。この作品って、劇場公開時は全米でもそれなりにヒットしたようですが、観た人の反応はイマイチだったらしく、ロッテントマトの評価は10点満点中で5点、支持率は39%に留まりました。一方、日本での評判は「篠田麻里子の吹替えがクソすぎる」という、どうでもいい話題で多少の盛り上がりを見せたものの、総合的な満足度はやはり低かったようです。

出演者の顔ぶれを見ると、ジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・セイフライト、キリアン・マーフィー、オリヴィア・ワイルドなど、有名若手俳優がズラリと並んでおり、キャスト的には悪くなさそう。そして監督が『ガタカ』のアンドリュー・ニコルとなれば、SF映画好きはちょっと期待してしまうかもしれません。しかし実際に観てみると「ありゃりゃ、やっちまったなあ」てな感じの内容でしたよ、トホホ。

この映画の印象を一言で言い表すならば、「リアリティがない」。これに尽きるかなと。本作は「時間が通貨の代わりを成している世界」の物語であり、物を買ったりサービスを受けたりした対価を時間で支払うというシステムが確立しています。人々の腕には残り時間を示す”残数カウンター”が付いており、時間を消費するたびにどんどん減っていくわけですが、これだけなら”おサイフケータイ”と同じで何ら不都合は生じません。ところが、ここでは自分の残り時間が余命と直結しているため、時間が無くなれば即死亡という、まさに「タイム・イズ・ライフ」な厳しすぎる状況になっているのですよ。

まあ、SF映画は現実には無い世界を見せることが命題なので、こういう奇抜な設定自体はいいと思うんです。問題なのはその見せ方でしょう。何年後の未来なのか知りませんが、現代とさほど変わらない生活環境でありながら、お金の代わりに時間を支払い、時間が無くなれば死亡するという異様な世界観に全然説得力がありません。大掛かりな装置をこれほど大規模に導入するには相当な経費が掛かると思うんだけど、そのコストはいったいどこから捻出しているの?とか。

あと、値段の設定が結構いい加減なところも気になりました。劇中、主人公のお母さんはバスの運賃が払えず歩いて帰るはめになり、その途中でタイムオーバーになって死んでしまうのですが、コーヒー1杯の値段が3分という設定なのに、路線バスの片道料金が1時間なんてバランス的におかしくない?コーヒーの平均価格を仮に300円とすると、バスの乗車料金はその20倍だから6000円になってしまう。なんと、通勤のための交通費がたったの1日で往復12000円もかかるの!?どう考えても高すぎるだろ!こんな世界で経済システムや社会インフラが成立するとはとても思えないよ!

そして、主人公の行動にも納得できないというか、全く共感できないってのも大問題でしょう。「譲り受けた時間を無駄にはしない」などとかっこいい事を言ってるくせに、それをどう有効活用するのか示さないままギャンブルに興じて刑事に追われ、金持ちのお嬢様と恋に落ちて逃避行。挙句の果てには成り行きで義賊になってしまうなど、「こいつはいったい何をやりたかったんだろう?」と呆れ果てるしかありませんでしたよ、トホホ。

というわけで、作り手側が訴えたいことは何となく理解できるんですが、それを上手くドラマの中で表現し切れていないところが非常にもったいない作品でした。設定は面白いんですけどねえ。


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